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「あんたと蒼は俺の思惑通りに別れた。してやったり、と思っていたんですがね・・。
なのにふたりとも、あれからずっとひとりのままだ。さすがにもうタネ明かしをしないといけないんじゃないかと、機会を伺っていたんです。で、今夜しかないと。
蒼は今、ロサンゼルスの病院に勤務してますよ」
俺はカウンターに一万円札を置き、すぐにバーを出た。
そしてその足で親父に電話して、タクシーを拾い実家に向かう。
弟にも連絡し、来てもらうことにした。
『重大な話がある』と。
実家に到着すると、既に弟は着いていたようで俺を待っていた。
「どうしたんだ玲生、こんな遅い時間に。それにおまえ、その格好はパーティー帰りじゃないか?」
「申し訳ない。でも、明日ロサンゼルスに立つ前に、親父や直生・・母さんにどうしても話しておきたいことがあって」
俺は、目の前にいる家族に向かって言った。
「今年いっぱいで、社長を退任したい」
俺の発言に、最初に反応したのは母親だった。
「あら、社長を辞めてどこかに行くの?」
「ちょっと母さん、何を呑気なこと言ってるんだよ。兄貴・・どうしたんだいったい」
「まぁ落ち着け、直生。玲生の話を聞こうじゃないか」
俺は少し前に知り得た真実と、自分の想いを話した。
彼女には離婚歴があるとはいえ、許されない恋愛ではなかったこと。
ロサンゼルスにいる彼女と、ふたりで未来を生きたいということ。
そのために、俺は『普通の男』になることを選んだのだと。
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