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しばらくして、ケーキを持った河本とアシスタントが社長室に入ってきた。
さっそくいただこうとケーキの皿に手を伸ばすと、フォークを差し出した河本と紅茶を注いでいたアシスタントの手がぶつかった。
「あつっ・・!!」
俺は咄嗟に手を引いたが、ワンテンポ遅く、ふたりの手がぶつかった勢いでこぼれた紅茶が俺の左手にかかった。
「社長!! ・・大変だ」
河本が立ち上がり、すぐに社長室を出てどこかに電話している。
若い男のアシスタントは呆然として、顔が真っ青になっていた。
「大丈夫です・・そんなに大したことじゃない」
手はヒリヒリと痛み始めたが、できるだけ表情を変えずにアシスタントに声を掛けていると、河本が社長室に入ってきた。
「社長、隣のビルの2階のクリニックフロアに皮膚科があります。連絡済みですから、そこですぐに手当てしてもらってください」
「そう・・だな。行ってきます」
俺は立ち上がり、アシスタントの方をポンと軽く叩いて『気にするな』と言い、部屋を出る。
下りのエレベーターに乗って2階で降り、連絡通路で繋がっている隣のビルに入ってすぐ右側にあった皮膚科のドアを開けた。
「服部(はっとり)さんですか? 河本さんという方からお電話がありましたが」
受付の女性の問いかけに俺が頷くと、そのまま処置室のような場所に通され、医師が来るまで火傷の箇所を流水で冷やすようにと言われた。
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