418人が本棚に入れています
本棚に追加
「先生・・・・薬を塗ってくれるような人がいない場合は、どうしたらいいですか?」
俺は、会社から車で10分ほどのマンションで一人暮らしだ。
会社でのケガだし、言えば高澤あたりが来てくれるだろうけど、それもどうかと考えた。
「あら・・。そしたら、今夜は患部を絶対に濡らさないようにして、明日の朝イチで来院できますか? 診察と処置を合わせても10分かからずに終わりますよ」
「・・そう・・ですね・・」
確か明日の朝は、営業部門の報告会があったはずだ。
15分ほど調整すればなんとかなりそうだが、その後の予定が調整可能か分からない。
「もしかして、お仕事の都合で朝の来院が難しいとか? うーん・・・・それなら、21時頃もう一度ここに来れますか?」
「えっ」
「いま16時過ぎなので、ひどくなるようだと5時間もあれば分かると思うし、その時に薬と包帯も変えちゃいましょう」
「でもご迷惑じゃ・・。帰りも遅くなりますし」
俺はまだ仕事も残っているし、21時にここに戻ってくるのは容易いことだった。
それにもう少し、彼女と話をしたいと考えていた。
本当に電車で会った女性ならば、お礼をちゃんと伝えたかったから。
「大丈夫ですよ。今日は元々、夕方から備品の入れ替えがあって立ち会う予定だったんです。ちょうど終わる頃だし、服部さんが良ければ」
「じゃあ・・そうさせてもらいます。ありがとうございます」
「お大事に。また後ほど」
やわらかく微笑んで、彼女は診察室に戻っていった。
最初のコメントを投稿しよう!