第一章

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電車では横並びだったし、確かに真正面からお互いの顔を見たわけではなかったものの、俺を助けてくれたのは彼女だと勝手に信じていた。 「夜、もう一度聞いてみるか・・」 俺は左手に巻かれた包帯を眺めつつ、オフィスビルに戻り高層階に向かうエレベーターに乗った。 『服部さんみたいなイケメン、会っていたら忘れないと思いますよ』 ガラス張りのエレベーターには俺ひとりが乗っていて、窓に映る自分の顔をまじまじと見た。 目元が印象的だと言われることが多い。 大きくないものの、少し色素が薄いからだろうか。 相手をじっと見るのも、そう言われる理由かもしれない。 元々、見た目に無頓着だった俺に河本や高澤が『相応しい見た目』をアドバイスしてくれるようになってから、周りの反応が変わった。 180センチの身長を活かしたコーディネートや、顔の印象に合う髪型もそうだ。 「イケメン・・か」 ひとり言をつぶやきながら、俺はオフィスフロアのドアを開けた。 「社長! どうでしたか?」 河本が飛んできて、俺の様子を確認する。 その後ろにはアシスタントも控えていた。 「大丈夫ですよ。そんなに心配しないでください」 「本当に申し訳ありませんでした。ほら、お前も謝れ」 河本がアシスタントの後頭部を抑え込んで、頭を下げさせる。 「もっ、申し訳ございませんでした!」 「ふたりとも、もうそのくらいで・・。そうそう、さっきロールケーキを食べ損ねたので、もし良ければ一緒にどうですか?」 そう伝えると、ようやく河本とアシスタントはホッとした表情になった。
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