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電車では横並びだったし、確かに真正面からお互いの顔を見たわけではなかったものの、俺を助けてくれたのは彼女だと勝手に信じていた。
「夜、もう一度聞いてみるか・・」
俺は左手に巻かれた包帯を眺めつつ、オフィスビルに戻り高層階に向かうエレベーターに乗った。
『服部さんみたいなイケメン、会っていたら忘れないと思いますよ』
ガラス張りのエレベーターには俺ひとりが乗っていて、窓に映る自分の顔をまじまじと見た。
目元が印象的だと言われることが多い。
大きくないものの、少し色素が薄いからだろうか。
相手をじっと見るのも、そう言われる理由かもしれない。
元々、見た目に無頓着だった俺に河本や高澤が『相応しい見た目』をアドバイスしてくれるようになってから、周りの反応が変わった。
180センチの身長を活かしたコーディネートや、顔の印象に合う髪型もそうだ。
「イケメン・・か」
ひとり言をつぶやきながら、俺はオフィスフロアのドアを開けた。
「社長! どうでしたか?」
河本が飛んできて、俺の様子を確認する。
その後ろにはアシスタントも控えていた。
「大丈夫ですよ。そんなに心配しないでください」
「本当に申し訳ありませんでした。ほら、お前も謝れ」
河本がアシスタントの後頭部を抑え込んで、頭を下げさせる。
「もっ、申し訳ございませんでした!」
「ふたりとも、もうそのくらいで・・。そうそう、さっきロールケーキを食べ損ねたので、もし良ければ一緒にどうですか?」
そう伝えると、ようやく河本とアシスタントはホッとした表情になった。
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