3人が本棚に入れています
本棚に追加
桜の下に死体がある。
よく耳にする名言だが、その理由がこの間、わかってしまった。
その日、桜の花びらがひらひら散る中、木の根元を知り合いの少女が、一心不乱に穴を掘っているのを目にした。
何をしているのだろうと、何となく眺めていると、その穴に入って自身の上に土をかけ始める。
私はあまりに現実味のない光景に、しばらく呆然としてしまった。
我に返って慌てて少女を止めようと駆けつけるが、土は既に少女を覆って隠している。
急いで手で土をどかすが、そんなに深くないはずなのに、一向に少女は現れない。
ひょっとしたら幻覚でも見たのかと首を傾げるが、カツンっと何かが手にあたる。
そこを掘り返してみると、少女が使っていたスコップが出てきた。埋められて時間が経っていないのか、土で汚れている以外は新品同様だった。
もうすぐ少女が出てくるかもしれないと、さらに掘り進めるが、手が土をかき分けるだけで、何も出てこない。
既に諦めた時、ふと、少女が言っていたことを思い出す。
「桜が好き。いつか1つになりたいな」
私は悟った。少女は本当に、桜と1つになったのだと。
桜の下には死体がある。そう言った人は、私と同じように自らを埋める者を見たのかもしれない。
そうやって人々を魅了し、誘い込む桜を、私は恐ろしいと感じた。
以来、私は桜が嫌いだ。
最初のコメントを投稿しよう!