俺と似た髪型のやつ

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俺と似た髪型のやつ

めぐは俺が好きだ。 でも、なんかズレてて、 俺がそばにいないと、 俺と似たところを持っているやつに、 俺の影を探そうとする。 俺たち付き合ってるんだし、 実際毎日会えてるのに、 何故か、俺との共通点を見つけると、 嬉しくなって目が追いかけてる。 まるで、推し活女子みたいに、 推しと同じ髪型とか、香水とか、 小物や、服装を愛でている。 いや、それ、俺じゃないし。 てか、俺のことがすきなんだよね? じゃあ他のやつなんてどうでも良くない? あれ?これって浮気? 違う違う。 だってめぐには俺しかいないし。 「ただいまぁ」 当たり前のように、 めぐの家に帰る。 「あ、おつかれ」 めぐの息子の が答えた。 「あれめぐと愛奈は?」 「姉貴は、塾、おかんは、コンビニ」 とスマホを見たまま答えた。 コンビニかぁ。 スポドリ頼もうかなぁ。 そう思って電話するけど、でない。 仕方ない。俺も行ってみるか。 「新、俺もコンビニ行ってくるわ」 「はーい」 気のない返事を聞いて、家を出る。 家からコンビニは、 歩いてすぐだ。 少し駆けるように、歩く。 道路の対面。コンビニの前に、 めぐの姿を見つけた。 声をかけようとして、 ふとめぐの視線が気になる。 信号待ちの人々の方を、目を細めて見ている。 数人の中に、俺と似た髪型のやつを見つける。 あいつを見てる? なんかちょっとムカッとする。 信号が変わって、めぐも道を渡ろうと、 小走りになる。 でも視線は、チラチラとやつを見ている。 渡りきったところで、 そいつは、俺のいる方と反対に体を向けた。 まだ、めぐは彼を目で追っていた。 「…ふうと君」 近づくと、めぐがそうつぶやくのが聞こえた。 「めぐ」 声をかけると、明らかに表情が明るくなって、 笑顔で俺に駆け寄ってくる。 「ふうと君、どうしたの?」 触れたい、抱きつきたい。 そんな感じに、しっぽ振ってくる。 さっきのは何だったんだよ。 「ん、めぐが浮気してるんじゃないかって、心配で、むかえにきたの」 そう言うと、少しほっぺを膨らませて、 「そんなことしないよ」 といった。 その後少し俺に近づいて、ささやくような声で、 「だって私には、ふうと君しかいないんだから」 といった。 そんなに赤くなるなら言わなきゃいいのに。 でも、その言葉には安心してしまう、 ちょろい俺。 「でも、さっき、知らない男をじっと見てた」 わざと怒ったように言う。 「あ、あれは…」 ちょっとオロオロしてる。 「髪型がふうと君に似てて、 何かちょっとふうと君に会いたくなっちゃって…」 わかってる。 嘘じゃないって。 は俺の代りでしかないって。 でもやっぱり嫉妬してしまう。 「へぇ」 ちょっと冷たく言うと、慌てたように、 「ふうと君の、好きなアイスと、 スポドリ買ったよ。」 と言う。 心の中でじたばたしているのがわかって、 からかいがいがある。 「あとで、お仕置きだなぁ」 その言葉に顔を真っ赤にするあたり。 もう完璧に俺に洗脳されてるなあ。 そんなめぐの様子に、 ちょっと満足して、 一緒に家路についた。 まぁ、結果オーライかな?
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