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「会長~、そろそろ座って料理頼んでいいですかぁ?立ちっぱなしは疲れるんですけどぉ」
「あ、あぁ、…すまん」
「会長が謝ったぁ!」
レアだ!
「お前は俺をなんだと思ってるんだ…」
「え、え~とぉ~……」
あははぁ…と笑って誤魔化しながらやっと席に着き、全てのテーブルに備え付けられてるタブレット端末で軽食のパスタを頼んだ。
「ん?お前、またそれだけか?」
「それだけってぇ……確かに、みんなと比べたら少ないかもしれませんけどぉ~…」
だが、これは許容範囲内だと思うぞ。
そう思ったが、口には出せなかった。
何故なら、そのタイミングでもう頼んだ料理がきたからだ。
時間が時間なので、軽食類は作り置きしてるのかもしれない。
「うわぁ…会長、相変わらず沢山だねぇ…」
6人がけテーブルの5分の2を占める会長の料理たちを見て、思わず声に出す。今日は和食の気分らしく、焼き鮭や海鮮丼、天ぷら、煮魚……といったものがどんどん運ばれてくる。というか、魚多いな。
「そうか?お前、これぐらい食わないから、デカくなれないんじゃないか?」
「いやいやいや…。会長、これは流石に多すぎるよぉ。一体、体のどこにこの量の料理が入るのさぁ。それに、デカくなれないは余計だよぉ~?一応170センチはあるんですけどぉ~」
だから、決して俺がチビなわけではない。185センチ以上ある会長がデカすぎるだけだ。
神崎家のDNAはどうなってるんだ…。
「いや、お前の場合は背が低いとかじゃねぇんだが……」
「ふぅ~ん?じゃあ~、どういうことなんですかぁ~?」
若干苛つきながらそう聞くと、会長は笑いを含ませた。
「お前は背の割に細っこいんだよなあ、他の奴と比べて」
不意に立ち上がって、こちら側に来たかと思うと、会長は俺の右腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
「う、わっ…!」
「ハハッ!ほら、こんな簡単に包み込めるぞ?」
「ちょっ…!や、止めてくださいよぉ~!」
一瞬体が硬直し演技を忘れかけたが、すぐ我に返ってチャラ男らしい反応をし、やんわりと会長から離れようとするが、思いのほか力が強く離れることが出来ない。
さて、どうしたものかと思っていると、救世主が現れた。
「全く…何しているのですか、貴方達は」
切れ長の涼やかな碧色の瞳で、こちらを冷たく見下ろした副会長である。
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