チャラ男会計様

7/16
前へ
/129ページ
次へ
 会長にあげた残りの半分を食べ終えてから、副会長について行った俺は今現在、生徒会室にいた。 「………」 「…………」 「……………」  いや、普通に気まずい。  副会長、何か言って。 「水無月」 「は……うん、なぁに~」  危なっ…思わず素でいきそうになった。  大丈夫、バレてない、よね? 「昨日はよくも帰ってくれましたね」 「あ、あはは~…」  あぁ、良かった。この分だとバレてなさそう。  まぁ、あれだけではバレないか。 「全く…許可も出してないのに勝手に帰るだなんて…」 「えっとぉ、ごめんねぇ~」 「はぁぁ、どうせ貴方のことです。面倒くさいとか思ったのでしょう?それか、でもあったのでしょうね」  確かな嫌みと嫌悪感を含ませて副会長は吐き捨てる。 「…さぁ、どうでしょうかねぇ~」 「貴方のそういうところが嫌いなんですよ」  どうせ、昨日は仕事なんてしていないでしょう。 「今日はきちんとしてもらいますよ」 「…あはは~、分かったよぉ~。流石に今日はもう怒られたくないしねぇ~」 「それならいいです」  それだけ言うと、副会長は先に生徒会室を出ていった。  完全に1人である。 「ははは…しょうがないとはいえ、結構毒吐かれたな」  小さな声でボソッと呟く。  俺は、副会長に嫌われている。  勿論普段は普通に話すし、そこまであからさまではない。  でも、ふとした時や2人だけの時は言動の節々に毒が混じる。  そもそも何故嫌われているかというと、俺の噂が原因だ。  曰く、俺には大勢のセフレがいると。  曰く、頼まれれば誰とでも寝ると。  覚えてないが、他にも色々あった。  誰が流したのかは分からないし、興味もない。  ただ、チャラ男を演じていることと、俺が否定も肯定しないことが噂を更に助長させている。  実際はセフレなんていないし、誰とも寝たことなどないが。  今まで噂を信じた何十人かにお誘いをされたことがあるが、先約がいる(野良猫の世話)と言ったり、用事があると言ったりして、のらりくらりと回避してた。  まぁ、その現場を何度か見られてたからな。  だから、副会長は、というより、この学園のほとんどの人がその噂を信じている。  信じてないのは、“僕”を知っている理事長と(ごく)一部教師ぐらいだ。  信じてないっていうより、噂が嘘だとというのが正しいがな。  だからというわけでもないが、彼らは俺のことを心配している素振りを見せたり、コソコソと行動していたりする。  気付かれてないと思ってるのだろうが、俺は何となくだが感づいている。彼らがその噂を少しでも消そうとしていると。  俺が、僕が、傷付かないように。 「…まぁ、僕は嫌われたとしても、もうどうでもいいけどね……」  そう、どうでもいいんだ。  もう期待して、信じて、絶望を、苦しみを、悲しみを感じたくないから。  それに、どうせもう僕は何も……… 「「あー!マコちゃん、ここにいたのー?!もうすぐ昼食時間終わるよー!」」 「…あれぇ~?もうそんな時間なのぉ~?」 「「そうだよ!ほら、午後は出るんでしょー!」」  早く行くよー! 「うん、今行くよぉ~」  俺は先程までのくだらない感傷を捨て、双子の後に続いて授業を受けに教室ヘ向かった。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

879人が本棚に入れています
本棚に追加