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❲noside❳
ネオンが輝く夜の繁華街。
ここでは、すっかり出来上がったサラリーマン達や独り身らしきOLの団体が酒場で酒盛りをしていたり、不良少年がゲームセンターでUFOキャッチャーをしたりしている。
そんな昼とは全く異なる雰囲気とざわめきの中、1人の黒いパーカーを着た者が早足に歩いていた。目深にフードを被っている為、顔と表情を覗う事は出来ない。
その者は脇目も振らず、薄暗い路地裏へ一直線に向かう。
そこを通り抜けた先にあったのは、この街の裏側。
ありとあらゆる欲望と暴力に満ちた裏の世界─通称;暗黒街。
妖艶な姿をした女が男を誘惑し、厳つい見た目の男達が抗争をする。薬の売買が当たり前のように横行し、リンチなんて日常茶飯事。
そんな、警察からも見放された場所が此処だ。
フードの者はそれを知ってか知らずか、暗黒街を突き進む。
ある角を右に曲がって少し時が経った頃、複数人のガタイのよい人が現れた。
ソイツらは華奢なフードの者の行き先を完全に塞ぎ、いやらしくニヤニヤと嗤っている。
「おい、そこのニイチャンよォ。ココはオレらの島なンだわ」
「そうそう。だからさァ、通行料を俺らに払わないとイケないワケ」
「金がナイなら、ニイチャンだったら躰で払ってもいいんだぜェ。いや、むしろそれがいいかァ」
ギャハハと嗤いながら、そんなことを言う。
その間、フードの者は少し俯きずっと黙っていた。
「おい、いい加減何か言えよ」
そんなフードの者に痺れを切らしたのだろう。
男達のうちの1人(ここでは男Aとでもしておこう)が腕に手を伸ばした。
その時、初めてフードの者が動いた。
伸びてくる腕を逆に掴み、はたき落とす。
「…その汚い手でボクに触るな」
その声は、高くも低くもなく、透明で澄んでいた。こんな状況でも、思わず聞き惚れてしまいそうになる中性的な声だ。
しかし、怒りで頭を支配されている男達には届かない。
「テメェ…コッチは折角優しくしてあげようと思ってたのになァ」
「おい、ヤッてしまおうぜ」
そう言って、逆上した男達が一斉にフードの者へ襲いかかった。
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