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最後の山場は華子の水芸だ。簡易の舞台になったせいで、派手に水を出せば会場全体が水浸しになってしまうおそれがある。
そのため水量や勢いが限られてしまったのだが、その分観客との距離が近いため気にならないだろう。
艶やかな羽織袴姿の華子がテーブルの上にある陶磁器で中国茶を分け入れると、茶器の一つから水が勢いよく飛び出る。
慌てて扇子で蓋をすると、水は一旦止まるものの今度は扇子から水が噴き出してくる。これを三回ほど繰り返し、会場内の笑いを誘う。
やがて、茶器や扇子の水も止まり華子が一息つくと、今度は両脇に置いてある陶器の瓶から水が飛び出る。
驚いた華子が両手に持っている扇子で止まれと指示すると、扇子の右、左と代わる代わる水が出てくる。
ここからが水芸の見せ場、華子が舞うように扇子の水を操る。そして、最後は全ての仕掛けから一斉に水が吹き出て、上海公演の舞台は終演を迎えた。
ウィリアムの提案通り日本を意識した衣装や装置が目を引き、大喝采で公演は大成功に終わった。
「やはり異国人は日本の伝統美に弱いようだな」
演目が無事に全て終わり、聡一は満足げに呟いた。最後の舞台挨拶も終わり、観客たちが帰り始める。
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