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数日後。昼公演が終わった聡一一座楽屋では、夜公演までの合間に皆が一息ついていた。ところが、そんな穏やかなひと時を邪魔する出来事が起こった。
「た、大変だ、座長! どでかい異国人が入口でソーイーチ、ソーイーチと座長の名前を連呼し大騒ぎしています。どうしたら良いでしょう?」
聡吉が楽屋に入るなり、けたたましく叫んだ。どうやら大柄な異国人男性が聡一に会わせろと入り口で騒いでいるらしい。
「異国人が私に会いたいだって? 一体誰だろうか?」
駐留外国人にも鶴天斎聡一の名は知れ渡っている。特に知り合いはいないが、おおかた熱心な奇術好きがわざわざ訪ねてきたのだろうと考えていた。ところが、その異国の男性は聡一たちが良く知る人物だった。
「Excuse me」
馴染みの探偵・青山麗治郎と同じくらいの背丈で赤毛に碧眼、人懐こそうな柔らかな笑みを浮かべた中年紳士が楽屋の扉を開けた。
「Oh! ソーイチ!」
「あ、あなたは……」
聡一は男の顔を見るなり驚いた。まさかまた会えるとは思ってもいなかった人物が目の前に現れたからだ。そして、聡一以上に驚いていた人物がもう一人いた。
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