序章 前口上

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 このウィリアム・アーミティッジなる人物は、聡一の妻で華子の母親エイミーの姉、エレノアの夫である。今では舅のジョゼフに代わりカーター商会を経営している人物だった。  志乃はもちろんのこと、聡一もウィリアムとは面識がある。それどころかエイミーが上海に渡ってしまった後、聡一を励ましていたのは何を隠そうウィリアムだったからだ。 「お祖父様とエラ伯母様、それから可愛い天使のあの子は元気かしら?」 「Of course. みんな元気です。ティム(ティモシー)は天使というより、今はnaughty boy(わんぱく坊主)といった方が合っているね」  生まれ故郷である上海を離れ、華子が日本に渡ってから早十三年の月日が経つ。あの時に生まれた天使は勝の弟・(たまき)と同じくらいの年齢で、すくすくと成長しているはずだ。懐かしい皆を思い出すと、今でも胸が温かくなる。 「それで、今日は義伯父様一人でいらしたのですか?」 「あぁ、Yes. がっかりしましたか? 私、上海に居ます。でも、みんなLondonに居ます」  ウィリアムは苦笑いして目配せした。
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