序章 前口上

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「まぁ、やはりそうでしたか。そうとは知らず、今まで何の連絡もできませんでした。ご無礼をお許しください」  何となく皆が倫敦に帰ったような気がしていたが、ウィリアムの口から聞くまで確信はなかった。 「いいえ、シノサン。こちらこそsorry. ゴメンナサイ。私たち長い間、連絡していませんでしたから」  華子と志乃が日本に帰国した後、数年は手紙のやり取りが続いていた。だが、現代と違い連絡を取り合う術が多様化していなかった時代。異国の地に住む相手の安否を知るのもひと苦労だった。  その上、日本各地を回る聡一一座相手に手紙を出したところで、受け取れる確率はかなり低かったからだ。 「息子をLondonで育てたいとエラが望んだので、一旦皆で帰国したのです。そして、私だけbusinessのため再び上海へ戻ってきました」  今回ウィリアムは記録的な暑さの上海を逃れ、避暑のために日本・六甲山に訪れていた。  そして、日本一だと評判の聡一一座の奇術、可愛い義姪の華子を見るため、大阪まで足を運んだのだった。 「あれから色々ありました。それでカーター商会もrestartすることになりました」 「リスタート?」
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