ポテチ会社

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「ねえ、ポテトチップスってどうやって誕生したか、知ってる?あのパリッとした香ばしいお菓子ってね、実はフライドポテトが進化したものらしいの」 はあ、そうですか。 だから何ですか。 図書館で勉強中、大きな声で話しかけてくる友に、少し呆れつつ、返事を返した。 「もう!私が言いたいのは、創造力って大切よねってこと」 創造力、かあ。 君には絶対に無縁なものだね。 なんて口に出そうものなら、キックをくらいそうなので黙っておく。 「でね、私…ポテチ会社に就きたいんだ」 は!? 何故? 話が飛躍した気がするのは僕だけなのか? 眉間に皺が寄りそうなのを堪え、ため息をついた。 僕の頭上にクエスチョンマークが浮かんだのだろう、彼女が苦笑した。 「だってさ、ポテチ会社だよ?こっそりつまみ食いできるじゃん!」 目を輝かせている彼女の世間知らずな夢を壊すのは些か心が痛まないわけではないが、言っておく。 「言っとくけどそれ、業務上横領罪で捕まるよ」 淡々と話す僕が気に入らないのか、彼女は河 豚のようにほほを膨らませ、拗ねた。 「君は相変わらず夢がないなあ。これは全人類が一度は考える浪漫なのだよ。ほら、どっかの偉い誰かさんが言ったじゃない。 Boys,be ambitious《少年よ、大志を抱け》! ってよく言うでしょ」 だが、それには続きがあるんだな。 『少年よ、大志を抱け。 しかし、金を求める大志であってはならない。利己心を求める大志であってはならない。名声というつかの間のものを求める大志であってはならない。人間としてあるべき、すべてのものを求める大志を抱きたまえ。』 お前のは利己心を求める大志じゃんか。 勿論、それをいう度胸など持ち合わせてはいないため、頷くだけにしておく。 英語が得意な彼女は発音よくすらすらと話せる。 確かに僕は英語が苦手だけど、別に羨ましくなんかないからな! わざと英語でいう辺り、性格が悪すぎだ。 っていうかドヤ顔すんな!! 普通に考えて、全人類の浪漫じゃないだろ。 普通やらないし、やってたら今ごろ倒産してるっつぅの! 「ま、別にやらないけどさぁ」 つまらなそうに彼女は大きな欠伸をした。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ うちの大学は少し特殊で、卒業のために試験に合格しなければならないのだが、そのための勉強に時間を割いた方がいいと思うのだが。 そんな僕の心配はどうやら杞憂ではなかったようだ。 大学の卒業は何とか二人ともできたが、就職先の面接は、どうだろうか。 後日、僕は弁護士になるための司法試験に合格し、彼女の方を心配する余裕ができたころ、彼女に電話をかけた。 「もしもし」 何回かのコールの後、電話に出た彼女は開口一番に告白してくれた。 「私…不採用だって」 気の毒に思いつつ、他に面接すると言っていた会社はどうだったのか。 好奇心に負けた僕は聞いてみた。 「え、受かったとこ?…うん、Calbee」         【完】
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