12 支度しましょう

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 フローラは念入りに顔を洗って化粧をし、体を手早く拭ってから真新しいオレンジのドレスを身につけた。華やかなレースが上品でステキだと、フローラはとても気に入っている。普段は着ることのない華やかな衣装に、気持ちがふわふわと浮かれてきた。  ベージュ色の髪をとかし、くるくるとまとめ、金色の糸で編み込んだ葉っぱの形の髪飾りをつける。本当は花も飾りに使いたかったけど、全部持ち出してしまったので、アクセサリーはこれだけだ。 (うん。これはこれでシンプルでいいと思う。よし! いい……! と思う!)  一階に降りて「どうでしょうか?」と、ちょっと緊張しながらドレス姿を披露する。オスカーはこくりとひとつ頷いた。  水曜の花束に満足する顔と同じだと、フローラには分かってうれしくなった。 「これを」  オスカーはポケットから小箱を取り出して、フローラに手渡した。促されるまま開けてみれば、小さな金の花飾りのついたペンダントが入っている。 「わ、きれい……これ、私に、ですか?」 「はい。良ければ」 「ありがとうございます! すごくうれしい……今、つけてみても?」 「ええ」  でも着慣れないドレスで首の後ろの留め金を止めるのは、なんだか少し難しそう。ふと思いついて、フローラはオスカーに頼んでみる。 「つけて、下さいますか?」  オスカーは一つ頷くと、フローラの後ろに立って細い鎖を首にかけた。ほんの少し首筋にふれる指先は、やっぱりとてもやさしく丁寧で、フローラはドキドキしっぱなし。このまま永遠にペンダントをかけ続けてほしい、なんてことまで考えてしまう。  オスカーは小さな金具を止めた後、そのままそっと後ろからフローラの耳元に顔を近づけて、 「本当は、これを贈ってから告白するつもりでした」  と、低い小声で教えてくれた。  フローラはうれしさのあまり、もう返事もできなくなって、ただコクコクと何度も頷いた。
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