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「いや、大丈夫です。あのお二人は幸せ真っ最中なので、人におせっかいを焼きたくて仕方ないと言いますか。庭園披露宴の相手がいると言うまでは、あの令嬢はどうだ、この侍女はどうだと散々勧められまして……」
後半はぼやくようなオスカーの言葉だったが、今更ながら、オスカーの身分は結構高いのではと思い至り、フローラはヒヤリと背筋を凍らせた。
王都出身で、王族の護衛騎士といえば、それなりの身分の家柄だろう。大事な護衛騎士についた変な田舎虫を追い払おうとされても不思議ではない。
「あ、あの、私、全然家柄とか考えなしで……全然、釣り合いが取れないと思うんですけど」
「俺が選んだと言えば、それで済む話です」
「あっ、はい……」
オスカーはまた淡々とした口調で、当たり前のように言う。
「それに品定めとかじゃないですよ。単に、俺が初めて好きになった人を見たいという好奇心なだけです。だから、そんなに緊張しなくても……ってフローラさん? 大丈夫ですか?」
「は、はい。ちょっと、いただいた言葉の破壊力がすごくて……」
いつもポツポツと必要なことしか話さない寡黙なオスカーが、自分のために言葉をたくさんくれるのが、フローラはたまらなく嬉しかった。正直、ちょっとキャパオーバーだった。だけど、今言ったような言葉たちを、オスカーが必要だと思って伝えてくれているのなら、なんて幸せなことだろう。
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