第1章 再会のきっかけ

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第1章 再会のきっかけ

あの夏、僕らは離れてしまった。 固く結んだ手も離してしまった。 笑い合ったあの日々も今では 懐かしい“思い出”になっている。 君のことを1日たりとも忘れた事はない。 僕の大切な親友であり、想い人であり、 運命の人なのだから。 でも、運命というのは残酷だ。 あの日急に引っ越しを告げられ 君に引っ越しの事を伝えられぬまま 時が去って 君も、今では僕が去ったあの日の翌日に 何処かへ行ってしまったそう。 前の学校に教材を取りに行くときに 聞いた事がある。 そして、あれだけ君との連絡手段の為に 欲しいと懇願していたスマホも 今では無意味と化している。 だって、引っ越しした後に渡されても 『君と』連絡をする為に欲しかったのだから 当然、意味のないものとなるだろう。 君は家族以外で連絡をとる人が居なかったし。 だから2人とも意気投合して 連絡先を交換するのに一生懸命だったのだ。 君との夏はとっても楽しかった。 外に出て近所を散歩して くだらない事で笑い合ったり、 キャッチボールなどのスポーツをして どっちが上手いか比べたり。 毎日が、楽しかった。 でも今の夏はつまらない。 学校に行っても君のような友達は出来ないし、 授業内容も簡単すぎてやり甲斐を感じない。 唯一良いところを挙げるとしたら 図書室の整備が行き届いている所だろうか。 夏は涼しいクーラーで熱された体に癒しを、 冬は暖かいヒーターで冷やされた体に暖を。 僕は図書室が前から好きで ほぼ毎日、5冊位借りて読んでいた。 この学校でも図書室の本は どの本もとても面白くて 本を読んでいるときは自然と顔が綻びる。 楽しいのはそれだけ。 あぁ、つまらない。 満たされない。 君に居て欲しい。 仮初めの、学校の友達なんか嫌だ。 君で良い。君1人でいい。 いや、君がいい。 もう一度会いたい。 …なんて叶わないのかな。 君と離れて早2年。 ずっと探し続けてるけど、 未だに君の行方は分かっていない。 あの笑顔はもう見れないのだろうか。 あの日々は帰って来ないのだろうか。 あの感情は封印しないといけないのだろうか。 『もう一度、逢いたいよ…。』 そう思いながらなんとなく歩いていた並木道。 ふと、夢見ていた『君』が 信号を渡っているのが見えた。 僕は思いにもよらぬ『君との再会』に 感謝を告げるしかなかった。 早速、君に声をかけよう。 …と思って君の名前を呼んだ。 『宙!』 君は振り向いて少し成長したように 見てとれる顔を見せた。 僕は胸が高鳴ってどうしようもなかった。 君との思わぬ再会に。 神様に「ありがとう」と、 感謝しても仕切れないこの思い。 …でも君から帰ってきた返事は 予想外の返事であった。 「誰ですか?」
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