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第2章 最初の一言
「誰ですか?」
その一言は僕の心を抉る為には
充分すぎる一言だった。
僕は一瞬、何が起こっているのか
分からずにこう問いた。
『なんで…?』
思わず言ってしまった。
彼女は余計に混乱して、
自分の記憶の中から『僕』を
捻り出そうとしている様な仕草をした。
「どこかで会ったことあったのかな…?
いや、でも私自身は全然記憶が……」
と、何やらブツブツ呟いている。
僕は受け止めきれない事実に
思わず、こう告げた。
『と、友達だったでしょ?
覚えてないかなぁ〜?
僕は「糸亥」って言うんだけど…』
僕の事なんてもう思い出して
くれない様なそんな気がした。
少なくとも「昔の友達」なら。
「糸亥さん、、、
本当にごめんなさい。
記憶にないですね…」
『…そっか。まあ2年も昔だしね。
覚えてなくても無理ないか。』
泣きたかった。
泣き叫んでしまいたかった。
こんなにも、僕は君のことを愛しているのに。
あんなにも、僕は君との再会を望んでいたのに。
君は、僕のことを覚えてはいなかった。
ただの高望みだったのだろうか。
君と過ごしたいあの日々は、
僕の都合の良い妄想だったのだろうか。
現実だったとしても、
君の記憶に2年も残るほど
大切な思い出ではなかった。
…ということだ。
泣きたい。
叫びたい。
こんなにも君との再会を
待ち侘びていたのに、
こんな仕打ちは良いのだろうか。
また君と話せるなら。
懐かしい思い出話として
昔の話をして僕とまた話せるなら。
それ以上は望まないというのに。
僕は忘れ去られていた。
誰しも記憶は風化する。
それを改めて実感したと同時に、
あの時の僕らの会話がふと蘇ってきた。
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「ねぇ、颯くん見て!紫蘭と勿忘草だよ!
この2輪すごいんだよ!!」
『うわぁ…すごく綺麗だね。
宙の方が綺麗だけど。』
「…もう!颯くんは一言要らないの!
恥ずかしくなってくるじゃん、、、」
『んー?何、照れてるの?可愛いね ニヤッ』
「あぁ///もう!」
『ふふっ…んで?その二つがどうしたの?』
「颯くんはこの2輪の花言葉って知ってる?
その2つがとっても素敵なんだ。」
『勿忘草は、私を忘れないで。だろ?』
「そう!よく知ってたね」
『まあ名前が特徴的だからな。
でも、紫蘭は知らないな…』
「そっかー、颯くんでも知らないんだぁ ニヤッ」
『んな、!馬鹿にすんなよ。
じ、じゃあ宙は知ってるのかよ!』
「うん。知ってるよ。
紫蘭は、、、」
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