プロローグ:設置

1/2
前へ
/229ページ
次へ

プロローグ:設置

2024年7月1日、月曜日の昼間。 夏の暑さがかなり厳しくなってきて、穏やかに吹く風は生暖かく心地よかった。 私はとある無人島の岸辺に立ち、これから行う壮大な"殺人計画"の下準備を"部下"たちに指示していた。この無人島は私の部下の会社の"所有物"であり、その用途を自由にできる権限を保持しているため、実質我が物顔で島を"支配"できるのである。今部下たちはこの島の決められた場所に、"ゲーム"に必要な道具(アイテム)を設置している最中だ。 私は目をつぶり、頭の中でなぜ自分がこのような計画を立てるに至ったのか、その動機を改めて振り返った。 私の"復讐対象"は、誰という個人や団体ではなかった。 もっとずっと大きな規模であり、私が目指している未来の理想像が、凡人には受け入れがたい思想ないし概念であることは、自分でもとうにわかっていた。しかし仮に今すぐは無理だったとしても、長い時間をかけて私の考え方に賛同してくれる"仲間"の数を増やしていけば、道はおのずと開けるような気がする。 この"ゲーム"は、そのきっかけを作る単なる"序章"に過ぎないが、当然捕まって全てが台無しになるリスクもあるので、私としては一種の"賭け"でもある。 大丈夫。 時間をかけてここまで大がかりな準備をし、私の命令に忠実に従う"組織"もしっかりと動かせている。 あとは大事な"キャスト選び"と、絶望させたターゲットどもに"唯一の逃げ道"を用意してやるだけだ。その逃げ道だけを頼りに、彼らは必死になってもがくことだろう。私はその様子を、涼しい顔で傍観して楽しんでいればいい。 プルルル。 部下からの電話が鳴った。 アイテムの設置が、島中の4つのエリアに全て完了したことを伝える内容の連絡だった。 ついにきたか。 私は笑みを浮かべ、砂浜に押し寄せる波を見ながら決意した。 必ず計画を実行し、目的を果たしてみせる。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加