Chapter1:アスペルガーの主人公

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発達障害には他に注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、高機能自閉症があるが、ここでは特に詳細には触れない。 もちろん障害特性には個人差があるので、同じアスペルガーでも対人関係が得意な人もいるし、感覚過敏が全くない人間だっている。なので、あくまで俺個人のエピソードを話していこうと思う。 俺は幼少期から人と関わるのが大の苦手で、学校時代も友達はほとんどできず、むしろ1人でいる時間が楽で楽しかった。 俺は地理だけが突出して得意科目で、日本も世界もあらゆる地名を知っているし、人口などのデータやランキングを調べるのがとても好きだ。そこがアスペルガーの特性であるこだわりが強い部分であり、趣味に没頭することによって嫌なことを忘れられる。現に地図帳を眺めている時などは、親に話しかけられるのも苦痛で、"自分の世界観"を邪魔されたくないという心理が働く。わがままではあるが、健常者でも自分の領域(テリトリー)に入ってほしくないという人は意外に多いと思っている。 "嫌なこと"__。 性格が大人しかったためか、小学校中学校とイジメの標的(ターゲット)にされており、無視されたり面倒な係を押し付けられたりしてきた。その頃から断ったり反抗することが怖くてできなかった。だから今の会社でも、パシリにされても我慢して、ひたすら仕事をこなすしかなかった。こいつらを怒らせたら、また昔のようにイジメられるかもしれないから。特に同性には注意しなければ。過去に受けた(トラウマ)が、傷つくことを恐れる俺に無意識にブレーキをかけさせていた。 俺だって、別に好きでこんな生き方を選んだわけではない。発達障害で生まれなければ、もっと堂々としていただろうし、人間関係も普通に築けたはずだ。アスペルガーの診断が下ったのは18歳の頃だが、自分自身学生時代から自覚はあったため、障害がわかった時はああやっぱりな、という感じでホッとした。 自分は人とは違う__。 それに気づいたのは小学校に入ってからだった。
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