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22.
不思議そうな顔をする三上を見つめたまま、僕はベンチから立ち上がった。
なんだ?
何かがおかしい。
耳元がじんじんする。
死体がない?
何を言ってるんだ、こいつは。
まさか、あれが本当に蝋人形だったとでも!?
いや、違う。
そうじゃない。
何かおかしい。
呆れ返った表情の三上を残して、僕はその場を逃げるように立ち去った。
今はとにかく一人になりたい。いや、二人に。
「レイさん! レイさん!」
「落ち着いて、海斗くん。私はここにいるわよ」
誰も来ない通路の一角にて、僕はその場に座り込んだ。
レイは僕の前に座ると、そっと僕の頭を撫でた。
「レイさん? どういうこと? あいつは何を言ってるんだ? ぼ、僕の推理は間違えてないよね?」
レイは悲しそうに微笑んだ。
「海斗くん。私が現実に存在しないっていうことは分かってるわよね?」
いきなり何を?
僕はレイの真意を図りかねたまま、おずおずと頷いた。
「レイさんは、他の誰にも見えてないし触れることもない。僕にしか見えていない存在だっていうことは分かってるよ」
「でも私だけじゃないの」
レイの目がキラリと光った。
「あなたも現実の存在ではないのよ。海斗くん」
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