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10.
「てっぺんから見たところで、これだけ木が生い茂っていたら発見するのは難しいと思いますよ」
「じゃあどうすればいいの?」
赤坂が眉間にしわを寄せて聞いてくる。
これまた可愛い。
僕はそんなことを言葉には出さず、心の中でも言葉には出さず、表情も変えずにただ淡々と当たり障りない意見を述べた。
「そうですね……とりあえず少し道を戻ってから、脇に入っていきましょう。山菜を探すイメージで。山菜が見つかったらそこを起点に周りを探してみましょう」
「なるほど。山菜採りの人が発見したルートを再現してみるわけね」
仮に本当にそんな不思議な屋敷があるとして、見つけたのが山菜採りの人だという話は聞いていない。もしかしたら猟師かもしれないし、山の反対側から逃げ出してきた兵士かもしれないのだ。
だが僕もあえてそんなことは言ったりしない。
「じゃあ行きましょうか」
僕の呼びかけで赤坂と来た道を戻ろうとして、ふいにレイがじっと森のなかの一点を見つめていることに気づいた。
僕が動き出せば、レイも引っ張られてくる。
ただ僕は、レイの視線の先で鳥達が不自然な飛び方をしていることに気づいたのだ。
「……木が揺れていない……」
「ええ。そうなの、海斗くん。鳥が飛び立つ時に木が揺れていないのよ」
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