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13.
ドアを開けた先に合ったのはガランとした大広間だった。バスケットコート二面分はありそうだ。
いや、大広間と言っていいのか?
何もない。ガランとした空間だった。シャンデリアも絨毯もない。ドアも外のものとは違い無機質な、まるで事務所のようなドアだった。
足元を見れば、ホコリや汚れが湿気で泥のようになっている。
「ここ、……何なんだ?」
赤坂はいつの間にか隣の部屋に行ってみたが、そこもやはり無人だった。
ただそのさらに奥にトイレや炊事場所のようなものがあったので、やはり人がいた事実はあったようだ。
「地下室があるわね」
不意にレイが言った。
「地下室、いえ、あるいは地下通路があるわ。足音の反響の仕方で分かるわ」
「じゃあ、どっかに地下道への入口が?」
僕は辺りを窺ったが、それらしいものはない。
いつの間にか戻ってきた赤坂が、スマホを取り出して何かを調べ始めた。
「確かにここ、上空から見ても見事にカムフラージュされてるわね」
「上空?」
赤坂が言うにはスマホでの衛星写真を確認したところ、確かに洋館の屋根らしきものが映っているのだが、同系色なうえにツル草や植物が重なりあっているので、そこにあると知った上で目を凝らさないと見つけるのはかなり厳しそうとのことだった。
いつの間にかレイも脇から覗き込んでいる。
「確かにこれじゃ滅多なことでは見つからなそうね。でも、そもそも何のための建物かしら?」
「それは……」
これだけの広い空間、ただの別荘とも思えない。ただ調度品が置かれていないので想像するのも難しい。
「え?」
何か手がかりでもないかと辺りを見回していた赤坂が、突然ある一点を指差した。
「何? あれ」
つられて見たのは部屋の片隅。泥のような汚れが塊になって盛り上がっている。
いや、盛り上がりは不自然なほど大きい。
あれじゃ、まるで……
近寄ろうとした僕は突然、足の裏に激痛を感じて悲鳴をあげた。
「痛っ!!」
「どうしたの!?」
「海斗くん!?」
僕は靴を脱いですぐに足の裏を見たが、特に血は出ていなかった。
「釘か何か踏んだと思ったけど……」
「ここの床、かなり汚れているから気をつけないと……」
レイは無言のまま、じっと床を見つめている。
赤坂の手を借りると、僕はすぐに部屋の隅の汚れに駆け寄った。
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