15.

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 僕がその事実を知ったのはたまたまだった。夜、テレビを見ていたら、赤坂の全国ツアー中止と芸能活動休止のニュースが流れてきたのだ。  すぐに本人に電話をかけたが、もちろん通じるわけもない。それからしばらくして大学の友人達とのチャットにて、彼女の体調がかなり悪化していることを知ったのだ。 「体調の悪化……ただの風邪じゃあないな。芸能活動まで休止するくらいなんだ」  ベッドに仰向けに横たわりながら、僕は一人呟いた。もちろん隣で佇むレイが聞いているのは百も承知で。 「となると、やはり考えられるのはあの洋館だ。でも僕は平気だ。僕と彼女の行動の違いとなると……」   僕は当日の行動を振り返る。  僕と赤坂のあの日の行動で違っていたことといえば…… 「あの蝋人形だ。彼女はかなりあれに触っていたけど、僕は……」  僕はに気を取られてそれどころではなかった。  ちらりとレイを見る。  レイは何も言わずに僕を見下ろしている。 「あの蝋人形、普通の人形じゃなかったのかな?」 「海斗くん」 「ん? 何?」 「あれは蝋人形じゃないわよ」 「どういうこと?」 「見つけた時から言おうと重っていたんだけど……あれは死体よ。ただし蝋化したね。いわゆるというやつなのよ」  死蝋。その言葉には覚えがあった。死体が腐らずに脂肪が変性し、蝋化したものだ。外気から遮断された低温、湿潤な環境で起こるといわれている。条件としてあの洋館は当てはまっている。 「死体……もしかして!」  僕はあることに気づいてパソコンを起動すると、赤坂が見ていた思われる上空からの洋館の画像を映しだした。  画像はかなり汚く、ノイズのような線が乱れていた。そこにあると場所を知らなかったら、洋館の位置を見つけるのはかなり難しかっただろう。  本当に赤坂はこんな画像を見ていたんだろうか? 「やっぱり」 「どうしたの?」 「あの洋館、北側にあるけど南側の旧日本軍の研究施設とは結構近いんだ」  厳密には洋館は東北東、研究施設は東南東にある。 「つまり?」 「二つの建物は地下でつながってるんだ」
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