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4.
赤坂乃愛は今をときめくバリバリのアイドルであり、そして僕と同じ大学に通っている。もっとも向こうは4年生で学年は一つ上、専門も外国語、おまけに大学の巨大なキャンパス内ではすれちがうことさえなく、僕とは全く接点がなかった。この間までは。
先週末、突然本人から電話があったのだ。
ちょうどお風呂から上がって、部屋で髪を乾かしていたときだった。
携帯電話が鳴り、画面を見ると知らない番号が表示されていた。
レイの方を見ると、彼女も無言で首をを振る。
おそるおそる着信ボタンを押すと、やや関西弁のようなイントネーションの可愛らしい声が聞こえてきた。
「もしもし。突然すいません。武藤海斗さんのお電話ですか?」
「そうですけど……あなたは?」
「あの……同じ大学の者です。赤坂乃愛といいます。この番号は海堂司くんから聞きました」
司は僕と同学年、同じクラスの男だが、何の部活、サークルにも入っていない僕とは違い、いくつもの部活やサークルを掛け持ちしている、人付き合いと運動神経の良さが取り柄だった。
3ヶ月ほど前、僕は彼の依頼で片思いの女性に今は恋人がいないことを突き止めてあげたことがあった。
「赤坂……さん? って、あのアイドルの……?」
「あの、彼があなたのことを名探偵だって。わずかな手がかりでも、かなりのことが分かるって」
ここで、「はい、そうなんです。僕は名探偵なんです」などと言うほど傲慢ではないし、「たまたまですよ」などとレイのアシストを無下にする発言をして睨まれる気もない。
「そ、それは、どの程度の手がかりかにもよりますが……」
「かまいません。月曜日に直接会って話したいのですが」
赤坂はそう言うと、時間と場所を打ち合わせて電話を切った。
「ふー」
突然の展開にいささか戸惑いつつベッドに仰向けに倒れ込んだ僕に、レイが冷ややかな視線をよこす。
「赤坂さんって、確か現役のアイドルの人よね?」
「う、うん……驚いたよ。まさか僕に依頼しにくるなんて……」
「どうだか? 新手のドッキリ番組かなんかじゃないの? 鼻の下伸ばして会いに行ったら、バッチリ間抜け面を全国放送されるわよ」
そう言うと、ふっとレイは姿を消した。
今、目の前に立っている赤坂は確かに可愛らしい顔立ちだった。小顔でぱっちりした目、明るい色のショートヘア。白を基調としたおしゃれなパンツルック。そして芸能人としてのオーラ。
間違いなく赤坂乃愛はアイドルだった。
ただ普段からレイの自然体で、それでいてどこかせつなげな美しさを目の当たりにしているせいか、僕には赤坂の可愛いさがどこか作り物のように見えた。
「武藤さん? はじめまして、赤坂です」
「少なくとも隠しカメラはないわね」
レイがそう言ったが、もちろんこれは僕にしか聞こえていない。
「武藤海斗です。よろしくお願いします」
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