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7.
土曜日、僕はいつものシューズにジーパン、長袖のトレーナーという格好で山に向かった。リュックの中にはレインコート、予備の靴下や下着、携帯カイロ、厚手の上着が一枚入っている。それからレイの助言でチョコレートを数枚持っていくことにした。
自転車をこいでS山に向かっていると、後ろに腰かけている(少なくとも外見的にはそう見えている)レイが話しかけてきた。
「その三上教授だっけ? その人は実際に山で何かを見たことはないのよね? そういう不思議なお屋敷だとか建物だとか あくまでもそういう噂話を聞いたっていうだけで」
「うん。本人が見たわけじゃないね。あくまでもそういう話があるよって教えてきただけだもの」
「でも彼の専攻は外国語、それも英語なんでしょう? いったいどこでそんな噂、聞きつけたのかしら?」
「元々このあたりに住んでいた人らしいからね」
「あら? でも今まで彼に教わっている学生で、その話を聞いた人はいないんでしょ? つまり、彼は今回、初めて自分の学生である赤坂さんにその話をしたっていうことよね?」
「案外聞いたのは、最近なのかもよ」
口ではそう言ったが、僕もそこは気がかりだった。単純に美人アイドル学生にえこひいきして、面白いネタを教えたというだけなのだろうか?
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