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8.
待ち合わせ場所は、S山の北側にある大きなスーパーマーケットの駐車場にした。時間は午前10時。店にはすでに人が集まり始めている。
僕がついた時には、すでに赤坂がきていた。真っ白なパンツと上着、丈の長いトレッキングシューズという出で立ちだった。大きなつばひろの帽子をかぶっている。
僕を見かけると、あでやかな笑顔をみせながら走りよってくる。
「ごめんなさい。待たせちゃって」
僕がそう言って頭を下げると、赤坂は優しく首を振る。初対面の時よりもだいぶ打ち解けた感じだった。
「大丈夫よ、武藤くん。私も今来たところだから。それより見て、あそこ」
そう言って赤坂はスーパーの裏手の森にはしる、一方の道を指差した。道といっても整備されたものではなく、ただ踏みならされて土が見えているだけのものだが。
「どうやら地元の人が山菜取りに使ってる道らしいの」
「なるほど」
「とりあえず、あそこを登れるだけ登ってみましょう。それと、さっきお店でお昼ごはんは買っておいたから」
当たり前だがプロの探偵ではないので、依頼料を受け取ることはない。ただお礼代わりに、レポート用の資料を貸してもらったり、お昼を奢ってもらうことはあった。
「残念。せっかくアイドルの手料理をご馳走になれるかと思ったのにね」
横からレイがちゃちゃを入れてくるのを無視して、僕は赤坂に言った。
「それじゃ行きますか」
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