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「海斗、海斗」  う~ん…… 「起きなさい。起きて」  お母さんの声だ……起きなきゃ。起きなきゃ。 「う~ん」  大きく伸びをして僕はベッドから起き上がった。母親の声がしたと思ったが、ベッドの隣に立って僕を見守っていたのは母親ではなかった。この十年、ずっと僕を見守ってくれていた一人の美女だった。 「おはよう、海斗くん。やっと目が覚めたわね」 「おはよう、レイさん。今何時?」  僕が目をこすりながら聞くと、彼女は時計を指差しながら少ししかめっ面になって答えた。 「朝8時。バスが出るまであと15分しないわね」  僕は最後まで聞かずにすぐにベッドから飛び出て身支度をすると、一階で食事の準備をしていた母親に朝の挨拶をして一目散にバス停へと向かった。  まったくこの年になってまで、朝寝坊のくせが治らないとは恥ずかしい。  隣で息もあげずに一緒に走ってくれる美女も、半ば呆れたような顔をしてこちらを見ている。  まあ、そんな顔ですら見惚れるほどに美しいのだが。 「今日は事件の依頼があるんでしょ? 遅れられないわね」 「なんか他人事みたいな言い方」  バス停までもう少し。頼むから間に合ってくれ。 「別に。海斗くんこそ、やけに張り切りすぎじゃない?」 「いつもと変わりませんよ〜だ」  実際に口に出さなくても彼女とは会話できるのだが、走りながら心の中で言葉を念じるというのも意外と疲れる。 「あ、バス。もうすぐそこの信号で止まってるわよ」  間一髪。  ぎりぎりでバスに乗り込んだ時には、僕は完全に息が上がっていた。
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