計画

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計画

ベッドで忍の腕に抱かれながら2人でひとつのスマホを見つめる。 2人とも裸で、忍に触れる肌がまだ熱を持っていて少しくすぐったい。 「……教会かぁ……」 スマホに映された幸せそうな写真と記事を目で追う。 「前に調べた時…教会で式だけなら、思った程かからないんだって思ったんですよね」 「……そうなんだ……」 写真の花嫁さんがすげー幸せそうで……すげーキレイで…… もうグダグダ悩まないと… 『幸せだ』と言ってくれている忍を信じると決めたはずなのに、やっぱり胸が『チクリ』と痛む。 ──これ……もし……男同士だったら………… 写真の幸せそうな2人を男同士だと想像すると…… やはり…………ちょっと……………… 後ろから俺の身体にまわされた忍の腕をギュッと抱きしめた。 絶対……女の子にモテない訳ない……。 身長だって高いし、顔だって贔屓目無しに見たって決して悪くない。 それに……俺には無い気の長さと、我慢強さも持ち合わせている。 中堅大のうちの大学でだって……俺と違って忍は偏差値の高い学部にいる……。 現に…………知り合った時にはめちゃめちゃ可愛い彼女がいた……。 俺なんて…………男に告白されたことはあっても……女の子に告白された事なんて一度もない……。 別に、告白されたところで……付き合う訳じゃないから良いんだけどさ……。 なんて言うか………… ステータスの違い……って言うか…… レベルの違い……って言うか…… ゲームで言ったら、忍は間違いなく勇者だし、俺は…………その辺を跳ね回ってるスライム程度かもしれない……。 ───あ…………イヤ……1度だけあるッ!…… 遥か昔の記憶が蘇る。 ───小学校1年の時…………告白された……。 隣の席の女の子に…… 「光流くんは私と結婚するんだよ」 そう言いきったのは………… ジャイアンみたいな女の子だったな………… 「……はは…………俺もあったわ……」 その記憶に何故か余計切なくなった……。 「先輩……?何が“あった”んですか?」 忍は不思議そうに俺に声を掛けると、後ろから強く抱きしめた。 「───別に……なんでもねぇよ……」 そう言いながら、忍がこんな俺を選んでくれたことが嬉しくて 少しだけ……申し訳なくなる……。 「…………俺……ウェディングドレス……着ようかな…………」 懲りもしない俺の戯言に、忍が後ろから小さくため息を吐いた。 「…………着たいんですか?……ウェディングドレス」 「…………別に…………そうじゃねぇけど……」 「じゃぁ、どうしてそんな事言うんですか……」 困ったような忍の声に俺は口を噤んだ。 「先輩?」 それでも何も言わない俺の身体をベッドに倒し……優しい目が……俺を見下ろす。 「……先輩?」 いくらバカな俺だって分かる……。 「……………だって………」 以前……何故忍が結婚式のことを調べたのか……。 「……………………前にも……忍が結婚式の事……調べたくなるような……“なにか”があったんだろ……」 『俺の前にも…………そう思う相手がいた』ということで…………。 別に……俺と付き合う前のことまでどうこう言うつもりなんか無い。 けど……やっぱり『結婚』を考える程の相手がいたのか……と思うのは 少し……ショックだった。 そしてこんな俺が出来ることと言ったら…………精々女装くらいなもんで………… つい責めるような言い方になってしまった俺を、忍のまん丸くなった瞳が見つめ、そして呆れたように笑った。 「本気でそんなこと思ったんですか……?」 そう言うと『はぁ〜……』と……わざわざ大袈裟にため息を吐いた。 「さっき言った、同姓同士の結婚式を偶然見かけて……調べたんですよ……。先輩とも結婚式挙げられるのかなって……」 俺を腕の中に閉じ込め、呆れた様な声とは裏腹に嬉しそうな笑顔が俺を見つめる。 「……ヤキモチ妬いてたんですね」 「………ちげーし……」 「違わないですよね」 「………………ちげーし………妬いてねぇし……」 目を逸らし不貞腐れる俺をそれでも嬉しそうに見ている忍が…… こんな面倒臭い俺のことを…… そんな風に想っていてくれる忍が…… 嬉しくて、余計素直になれなくさせる。 「まったく……先輩はすぐ不安になっちゃいますね」 それでも視線を合わせようとしない俺に痺れを切らしたのか「よいしょッ」と……自分の身体の上に軽々と俺を乗せた。 「───おいッ…」 否応なしに視線を合わせられ、ただでさえ熱い顔が余計熱をもつ。 「でも……ちょっとでも不安になったら、絶対言ってください。俺……必ずどうにかしますから……。先輩が安心して俺のそばにいられるように……必ずどうにかします」 俺の瞳を見つめ、俺だったら絶対言えないような言葉を……そしてそれ以上の愛情を注いでくれる忍が愛おしくて、嬉しくて……… 「………別に…不安になんかなってねぇし……」 また目を逸らして強がる自分が……本当に嫌になる………。 そして忍はそんな俺にいつも“クスッ”と笑って 「そうですね。先輩は…妬いてもないし、不安にもなってないですね」 優しく抱きしめてくれる……。 「おれ、明日からばぁちゃんが来れる範囲で……結婚式挙げさせてくれそうな所当たってみます」 そしてまだ照れてる俺の耳元で告げた。 確かに同性同士の式は断られることもある……と、さっき見た記事にも書いてあった。 けどその時……俺に紅茶をご馳走してくれた男性の顔が頭を過った。 「……すぐには見つからないかもしれないけど………おれ、必ず見つけ───」 「───忍!」 まだ途中の言葉を遮り、俺は忍の身体の上に起き上がった。 「病院の──隣の教会!」 「え……?」 「もしかしたら……挙げさせてもらえるかも!」 「……そう言えば……すぐ隣にありましたね……小さな教会……」 あの日……『今までたくさんの恋人達を見てきた』そう言っていた。それは恐らく結婚式でってことで……。 もちろん断られるかもしれないが……当たってみるだけの価値はある。 「ダメもとで聞いてみよう!」 素っ裸なのをすっかり忘れ……つい興奮して忍の胸に手をつきその顔を見下ろす俺を……正確には『俺の腰』を忍の手が押さえつけた。 そこで腰にと言うか……尻にと言うか……後ろから“当たる硬い物体”に気付いた。 「……忍………?」 「……この角度から………先輩…見たの……久々で……」 微かに頬を染めて……今までと違う忍の瞳に見つめられる。 「……もう一回……しようか……?…光流……」 「……え………」 もう一回って……この体勢からってことは………もちろん……思い切り……下から突かれるヤツ……では…… 「今度は“光流”が自分で挿れて……?…」 忍の色っぽい声に……そして想像通りの展開に……俺は『ゴクリ』と唾を飲み込んだ………。
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