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忍の本音 ※番外編
おれの名前は池田忍。
現在大学2年、ひとつ年上のすごく可愛い恋人がいる。
ものすごく照れ屋で、口は悪いけど……
本当はとても優しいその“恋人” に…………
時々…………すごく…………ムラムラします……。
誰にでもフレンドリーで、子犬みたいなその人は自分の振りまく『フェロモン』に全く気付いておらず……。
本人の与り知らないところで、そのフェロモンにやられている奴が結構いる。
「男なのにめっちゃ可愛いよな」
とか……
「あいつなら、付き合ってもいいな」
とか…………
「1回やらしてくんねえかな……」
とか………………
戯言が耳に届く度に……微かな殺意と戦う毎日だ。
「……忍?」
今日も先輩に声を掛けようとしていた輩に
「おれの光流に何か用ですか?……用事があるなら……おれが聞きますよ?」
そう“話し合い” を、提案したばかりだった。
しかも数回……。
大概は話し合いを提案すると、みな諦めてくれるからそれは良しとしても……
もうひとつ……問題がある……。
「……なんか…機嫌悪い?」
小首を傾げおれの顔を覗き込む先輩を……思わず抱きしめたくなるのを通り越し、押し倒したくなるのを堪えて、おれは笑顔を返した。
「そんなことないですよ」
「そっか……ならいいんだ。……今日夕飯なにしようか?」
安心した様に微笑む先輩に
───おれの夕飯は光流で……
心の中で答える。
「たまにはどっかで食ってく?……ラーメンとかさ……」
「…………ラーメン食べたいんですか?」
「んー……そうだな……たまにはな……」
「………………じゃぁラーメンの材料買って家で食べましょう。おれ……作りますから」
「えー……いつもわりぃじゃん……たまには忍も楽しなきゃ……」
「おれが作りますから」
先輩の肩を掴みそう言うと
「……わ…………分かった……」
大きな目をまだ大きくして……頷いた。
あんな……独身男の巣窟みたいな場所に先輩を連れて行ける訳がなかった。
目を離した隙にどんな危険が待ち受けているか……分かったもんじゃない。
それなら自分で作った方が何百倍もいい……。
それに───外にいる限り──先輩とできない…………。
─── そう…………もうひとつの問題……………それは『光流』と名前を呼ぶことで……ムラムラしてしまうこと…………。
普段『先輩』と呼ぶおれは、セックスの時だけ『光流』と呼んでしまう。
それは偏に……先輩を独占したい……
あの……普段は絶対見せてくれない……甘える瞳を……快感に歪む顔を…………
自分のものだけにしておきたいから……。
そしてそれ故に……『光流』と言葉にする事で、気持ちも身体も反応してしまう……。
本音を言えば……今だって家に帰るのすらもどかしい……。
このままホテルに直行したいくらいで……。
それでも先輩が喜ぶように、ラーメンの材料をスーパーに寄り買ってから帰る…………。
そして玄関に入るのと同時に限界がくる……。
「──先輩……」
後ろから抱きしめ細い首にキスをして軽く吸い付く。
首の後ろと肩が弱いのをちゃんと心得ている。
「──ちょっ…………忍ッ!待てって……」
慌てる先輩を片手でキツく抱きしめ、Tシャツの裾から忍び込ませた指で先輩の小さくて可愛い胸の先端をギュッと摘んだ。
「───ぁンッ……ダメ……だってぇ!……俺……汗臭いし…………」
逃げようとする先輩が可愛くて、余計強く抱きしめ吸い付いていただけの首に歯を立てた。
「───あッッ………ャッ───忍ッ!……ガチでヤダっ!!……シャワー浴びてからにしろよッ!」
そう言いながら先輩の“それ”はちゃんとスキニーの中で感じ初めているのが分かって
「…………光流……そんな風に言われたら……おれ……やめらんない……」
つい……光流を『いじめたい』衝動に駆られる。
そしてそう言いながらスキニーのボタンを外していく。
「…………じゃぁ嫌がんなきゃやめてくれんのかよ……」
振り向き不貞腐れた様に言う光流の顔を、手を止めじっと見つめ…………
「やめません」
にっこり笑うと態度とは裏腹に昂っている光流のそれを手で扱き始める。
「────ンーッ!!……一緒じゃねぇか!!」
顔を真っ赤にして怒鳴る光流が……
嫌がりながらもおれを受け入れて最後には甘えてくれる光流が…………
めちゃくちゃ可愛くて……
“とりあえず” 本日一度目を玄関で終わらせた……。
ラーメンを嬉しそうに頬張る先輩を眺める。
おれの作った料理を毎日「美味い!」そう言って食べてくれる先輩に幸せを感じる。
怒りん坊なところも、すぐ不安になってしまうところも、そのクセ優しくて……自分より人を優先してしまうところも…………
初めて『人を好きになる』ということを教えてくれる。
「先輩……美味しいですか?」
「んっ!めっちゃ美味い!!」
この笑顔を守りたくて、いつまでも見ていたくて……
だけど“あの時” だけは……啼かせたくなってしまうおれを……
ラーメンを頬張る幸せそうな先輩が、この後ベッドの中で縋るように甘える姿を想像してしまうおれを……
すべて解ってそばにいてくれる先輩を一生大事にしよう。
そして明日からも先輩の放つフェロモンを回収すべく頑張ろう……おれはそう心に誓った。
───早く先輩食べ終わらないかな……
END
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