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指された方向へ、また流れを遡る。 縁日の混雑にはさすがに手を上げたのか、戻りの道中ではお隣さんの世話焼きもすっかり消えていた。 平均的な身長と茶のコート姿はそうなるとすぐ人に紛れて、実は真っ先に見失った一人だった。 この状況では、気まずいとも言っていられない。 香ばしい匂いの真ん中で、 周囲の顔をきょろきょろ見渡す。  いない。 お品書きに眼を落とすと、砂肝がなかった。 う、これだとここに来る確証もない。 「どう、いたぁ?」 紙のお椀に玉こんにゃくを携えた美沙ちゃんがほくほくしながら合流する。 「ううん。この辺りで見たの?」 「見てないよ?  でも焼き鳥だし、栗、いつも買ってるでしょ?」 「焼き鳥なら何でもいいわけじゃ…… じゃあ、最後に見たのは?」 「参道に入る辺りかなぁ?」 それじゃあ私と変わりない。 ピンクのコートを目印にしたのか、そのうちにりんご飴を手にした子も焼鳥屋までやって来る。 「よかった合流できた……あれ、三人だけ?」 「あっ、横宮さん見なかった?」 「参道に入る前はいたけど」 うぅ、やっぱりその時点か。 とにかくも長くは止まれずに、 流れにのって歩きだす。 白木の鳥居でようやく人ごみを抜け出して、 道路の手前に立ち止まった。 ほっと息をつくものの、やはり数は三人だ。
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