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「ちょっと……
まさかの迷子じゃないでしょうね?」
この中では一番背高な子が、
周囲を見つつ眉をひそめる。
手元にりんご飴と綿飴で紅白が完成している。
「あたしたちのほうが、
屋台に夢中ではぐれたんじゃない?」
参道の流れを見つつ美沙ちゃんが応えて、
直後にたこ焼きをはふっと頬張る。
「いやこの場合は向こうでしょ。
そうだ、栗子ちょっと連絡とってよ」
「横宮さん携帯持ってないと思う……」
「嘘、今時?
どうすんの、甘酒飲んでる場合じゃないわよ!」
だって、寒かったもので。
紙コップを両手で包んで、私も首を回す。
誰かがはぐれるにしても、
この事態は想定外だった。
「何かあったとか…?」
不安の火種をあおるように、
美沙ちゃんがぽつり呟く。
「何か…?」
「──神社だけに、神隠し」
「……噂好きもいい加減にしてよ?」
「だよねぇ。あたしさ、
さすがに喋りすぎてなかった?
うんざりさせちゃったかなぁ」
「今更? それで嫌になったとか?」
「しばらく独りになりたくなったとか」
や、あの人はそこまで繊細じゃない。
矢継ぎ早な二人の会話に内心首を振りかけて、
その瞬間、
私の背中をちょっと冷たいものが駆けた。
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