前章

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──神隠しとは違っても。 お稲荷様があって、 いなくなったのは横宮さんで…… そうして私は、ついさっき。 「私…もう一回捜してくる」 気がついたら、そんなことを言っていた。 二人が本日三度めの驚き顔をする。 「一人で? 一緒に行くわよ」 「ううん、えっと、行き違いになってもまずいし。 見つけたら連絡するから、二人は待ってて?」 それらしい理由をなんとか見つけながら、 紙コップを傾ける。 ごみ箱経由で動こうとしたところで、 美沙ちゃんがバッグをくいと引っぱった。 「栗さ、やっぱ横宮さんと何かあった?」 「……やっぱ?」 唐突な問いより、その一語が耳に残る。 「ほんとに初詣に誘うし、 そのわりになんか距離あるし。 変だったよね、りーちゃん?」 「りーちゃん呼ぶな。 …ま、ぎくしゃく感はあったわね」 「………」 そんなにわかりやすかったとは。 自覚はあったといえ、 指摘されるとは思わなくて固まる。 というより、返事がわからなかった。 否定は苦しいし、頷いて更に問われるのも困る。 だからって、はぐらかすこともしたくない。 思考をぐるぐるさせていると、両肩に突然の衝撃。 私の肩を押さえつけて、 美沙ちゃんが正面に陣取っていた。 「何かあった? なかった?」 「…あった」 不意をつかれて、ころりと返事が転げでる。 あっ、と思った時には、 肩の手も迫る顔も消えていて。
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