前章

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復路側に並行する脇道は、 縁日の迂回路として一応戻り専用らしい。 とはいえそう厳しくはなく、 一人で引き返す程度なら悪目立ちもしなかった。 何十分とかかった往路が嘘みたいに、 社の影が近づいてくる。 いるだろうか。横宮さんは。 ちゃんと話がしたいと。 私の神頼みが原因なら、 お稲荷様じゃないかと思った。 仮に原因だったとして、 なぜそうなるのかは謎だけれど。 どのみち参道の手前で見失ったのだから、 そこまで戻ってみてもいい。 見つけられたら、今度こそ話を聞けるだろうか。 状況としては申し分ない。 それに聞きだし方もわかった気がした。 横宮さんとて不意の押しに弱いのだから、 先程の美沙ちゃんみたいにすれば何か零してくれるかもしれない。 でも私は、あんな風に何を訊くんだろう。 あの人から一番聞きたい答えは何だっけ。 胸中の迷いに引かれるように、 参道の半ばで一度立ち止まる。 そうしたら、右側の森で何かが揺れた。 はっと上げた視界で、 社叢林(しゃそうりん)にあるはずない黄色がひらめく。 ああやっぱりと思う間もなく、 私は茂みに飛びついていた。 突き出した両腕が確かなもふもふに被さる。 「捕まえた! 横宮さん返してください、 私そんなつもりじゃなかったんです!」
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