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「ちょおぉっ!
なんで見えんの誰っ……て、嬢ちゃん?」
「……えっ?」
あまりに覚えのある声は想像外だった。
そっと身を起こす。
黄色い三角耳と人の好さそうな細目が間違いない一方、この騒がしい慌てぶりと真っ赤なマフラーはどう見ても。
「狐……違い?」
「いや何が? 飛びついといて違うはひどくない?
つか、え? 何を返せって…」
混乱と不満を乱れ打ちしてくる狐さんがふと黙る。
頭がまだ追いつかない私は、
上手く反応できなかった。
覚えているのは、
経験がなくてもわかるほど濃いお酒の香りと、
吸いこんだ直後に押し当てられたふわふわの両手。
──何もかもがぷつんと切れた。
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