後章

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この2ヶ月間、汐美さんの話を持ちだす度、 一緒に思い出していた一葉。 今はお隣さんが持つ懐中時計を携えた男性と、 その家族だろう母子を写した穏やかな写真。 あの日入りこんだ館の主人であるらしい一家のお母さんと、目の前の顔がそっくりだった。 同じじゃない。そっくりだ。 呆然と二の句が継げない私の鼻から人差し指が外れる。 それを自身の顎に添えて、女性が呟いた。 「ふーん……そこまで知ってるんだ」 屈めていた腰が伸ばされて、 「帰ろ」 「待てい! さっきのを嬢ちゃんに説明してやれ、あと謝罪!」 優雅に翻ったケープの裾を、狐さんがわし掴んだ。 綺麗な顔に子どもみたいな不満が宿る。 「おじさんが説明してよ。というか、必要?  この子もういろいろ知ってるんでしょ。 謝罪だって原因作ったのおじさんじゃない」 「や、売り物を勝手に使われたわたしへの謝罪」 あ、そっちなんだ……。 「あと、この嬢ちゃんが何を知ってるって?  何も知らんでしょ、来るもの拒まずでよくわかんないまま乗りきってるだけだって」 うわあ、腹立たしい。 さすがに聞いていられなくなる。 「いいじゃないですか、それでも!  知らないからってとり残されたくないんです!」 「ほらやっぱ知らない」 ああっ、しまった。
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