前章

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──まあ、だからといって初詣に誘うことは…… なかったかもしれない。 * 「横宮さん!  私、どうしても知りたいことが…!」 「……えっ? 何?」 「………」 うん、まあ、そうなるか。 出した声は自分の耳にもささやき同然になる。 どう考えても、真面目な会話に向かない場所だ。 そこそこ有名な神社は鳥居の前から大混雑で、 拝殿前の大広場もまた呆れるほどの人波。 その大広場の片隅に、 私と横宮さんは二人だけで立っていた。 行列整理のあおりを受けて、 参拝が分断されてしまったのだ。 まあ、社のそばで立ち止まれただけ幸運だった。 そうして私は、 この偶然にあわよくばを狙っている。 最前列近くにピンクのコートを確かめて、 また隣を見る。 横宮さんは二人から眼を離していなかった。 大人としての責任感か、 この人は道中も美沙ちゃんのお喋りに付き合ったり、人ごみに流された私を捕まえたりと、 何かと世話焼きに回っている。 おかげで、 話しかけることもろくにできていなかった。 いや、何より立ちふさがったのは美沙ちゃんのお喋りなのだけど。 この日をずっと待っていたとばかりに、歩いても止まっても喋り通しで、ついにはりーちゃんに落ち着きなさいと怒られていた。 それで隙ができたと思えば、すぐさま境内の大行列だ。 復路側に屋台のたつ参道はとにかくも並ぶのに精一杯で、だから束の間の手持ち無沙汰が逃せない。
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