瑠璃色の未来

2/42
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
真っ先に目に入ったのは、白い天井だった。 ここは何処なんだろう? 起き上がろうとして、左腕が細い管で繋がれ 自由にならないことに気づく。 点滴? どうして私が点滴なんか…… そうだ 点滴なんかしてる場合じゃない ナイフを 市川を 私が……! 「瑠璃!目が覚めたのか?」 痛いくらいに握り締められた右手と、酷く充血した漆黒の瞳が、やっと私を現実に引き戻した。 「……京介」 「痛むとこはない?気分は?桔平、ナースコールしてくれ!」 「わかった!」 桔平さんもいるのだ。 ナースコール……じゃあ ここは病院だよね? 私、どうして 「命に別状ないって言われても 気が気じゃなくて、ずっとこのままだったらどうしようかと……」 あっという間に涙が溢れ 言葉に詰まる京介を見て、涙とは無縁そうな 強面の顔とのギャップに思わず微笑んでしまった。 「ダサいなぁ。今 泣くなよ、カッコつけるとこだろうが」 足元の、離れた場所からも声がする。 「ダサくても何でもいいんだ、嬉しくてたまらない」 京介は私の手を握り締めたまま 愛しそうに頬ずりした。 涙で濡れた手が、温かい。 「盛村さんも目が潤んでますよ」 「桔平、お前もな」 この部屋の空気が、優しくて温かい。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!