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「黒のパンツって、本当にセクシー。アンタみたいな美人が穿いてるとなおさらだ。でもねぇ、黒は俺の好みじゃないからマイナス五点」
どうやらさっきのビル風でスカートが捲れた時、ショーツを見られてしまったらしい。
のんびりした口調と、くだらないセリフ。
声だけなら、私と同世代か もう少し年上か。
こんな場所にいるなんて、きっとヤバい男に違いない。
無視するのが一番だろう。
せっかく静かに逝けると思ったのに、とんだ邪魔が入ってしまった。
──やはり私は、最期の最期までなんて情けないのだろう。
「ところでさぁ、アンタそんなとこで何してんのー?」
人の気も知らず間伸びした声色に、カッとなる。
「うるさいな、早くどっか行ってよ!」
「えー、早くは無理。めちゃくちゃ階段を上がってきたから、体力使い果たしちゃって動けないわ」
甘えたような言い方も 呑気でどこか愉しげで、ますます頭に血が昇ってきた。
今すぐにでも、この身体を宙に舞わせるつもりだったのに。
でも、こんな奴にその様を披露して最期を見届けられるなんて、いくらなんでも自分が哀れだ。
下手に騒がれて、面倒なことになってもたまらない。
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