第11章 山桜桃の頃

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 特別変わったこともなく、打ち合わせと作業を進めていった。企画営業から山川邸が工事に入ったとメールが来ていた。かなり現代的にした茶室が實際にどうなるか楽しみだった。そうして終業時間を迎えると、やり残しを今日は潰しておこうと残業をすることにした。そんな史之に気がついた島野が隣りに座っていた。 「なんか用か」  史之は顔もあげずに話しかけてみた。今は手を止めたくなかった。 「ちょっと飽きたからさ」 「あと5分待ってくれ。ここの数字打ち込んだら終わるから」  史之は計算ソフトに数値を打ち込み終えると、島野の方を向いた。 「よかったら、このあと少し飲みに行かないか」 「2杯で帰るけど。それくらいなら」 「わかった。片付けてくる」  島野が自席に戻って帰り支度をしているところで、史之は多香子に『友人と少し飲むから夕食は一緒にはできない』とメッセージを送った。 「待たせた。行こう」 「僕もOKだ」  島野に史之はついていく形になった。島野にはあてがあったのか、アーケードに連なっている店の一軒に入っていった。カジュアルフレンチ風の居酒屋だった。 「ずいぶん洒落た店だな。ジンソーダと山芋のフレンチフライと‥‥」  史之はメニューを手にして、キョロキョロしていた。思ったよりも広くて、半個室になっていた。きっと飛島とのデートにも使った店なんだろうと思った。 「生ハムとサラミ、スモークサーモンのサラダと、オムレツ。それとスパークリングワイン」
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