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第1章 淡雪
多香子は仕事で、遅かったり、早かったりする時以外は史之の家で過ごすようになっていた。今までの部屋は純粋に勉強部屋の機能とベッドくらいにしかなかった。
そして二人は、スケジュールを共有するため、スマホのアプリに用事を入れるようにしていた。
仕事とスポーツ観戦でも結構忙しいのに、史之は近代建築の勉強会と緊縛の練習、多香子は大学院の試験に向けてと資格試験の勉強と慌ただしかった。
ちょっとしたすれ違いが、大きなものになりそうな予感もはらんでいた。
「なぁ多香子今度の土曜日、観戦に行くのどうかな。僕は勉強会から、なるべく早く帰ってくるから、夕方から映画を見に行かないか」
「史くん、こっちはもう一月も前から予定を入れているはず。久しぶりに女子会もするんだから、後出しは駄目だって。日曜は用事はないでしょ、のんびりできるじゃん」
「今週も先週も多香子の寝顔しか見ていない気がするんだ。それでも僕より女子会か」
「そういう事言うのなら、緊縛の練習止める? 水曜の夜なら残業ないし、ゆっくり過ごせるよ。今日はどっちにいてもいいんだけど」
「……。それは、もうすぐ、卒業できる所まで来ているし。今が頑張りどきなんだ。止めるのは、ワンステージこなした後に」
「ごめん。でも、予定の優先度は、早い物順って決めているから。それは崩したくないの」
「あぁ、ごめん。もう出かけないと遅刻する。それじゃ今日はオンライン講義の日なんだけど、あっちの部屋でするね」
多香子は史之に軽くキスをすると、慌てて出て行った。続きはメッセージでやりとりをするが、感情的になるとしこりも残ったりした。
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