兄弟喧嘩

1/4
前へ
/4ページ
次へ
 兄弟喧嘩という、ありふれているがなかなか厄介な現象は、いつも唐突に始まるものだ。  その日曜日の午後、僕は自分の部屋で算数の宿題に取り組んでいた。  小学生も五年になると、宿題の難易度がだんだんと高くなってくる。クラスのみんなに取り残されないために、こうしていやいやながら勉強をしているのだ。  ノートに計算式を書いていると、お兄ちゃんがドアを開け入ってきて、こういった。 「なあ、ちょっといいか? 相談があるんだけど……」 「相談? なに?」 「この前、俺のゲーム貸してやったよな?」 「うん、そうだったね」 「今こそ俺にその恩返しをするときだと思う。実はさ、ママが買ってきてくれたおやつが最後に一つだけ余ってるんだ」 「え? どこにあるの。そのおやつ」 「キッチンのテーブルの上に置いといた。どっちが食べるか決めなさいってママがいってるんだ」  これは意外な幸運だ。仲良く半分ずつ食べよう……といってくれるのだろう。  しかし、その考えは甘かった。 「その最後の一つ、もちろん俺にくれるよな? 貸しはしっかり返してもらわないといけないから」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加