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兄弟喧嘩という、ありふれているがなかなか厄介な現象は、いつも唐突に始まるものだ。
その日曜日の午後、僕は自分の部屋で算数の宿題に取り組んでいた。
小学生も五年になると、宿題の難易度がだんだんと高くなってくる。クラスのみんなに取り残されないために、こうしていやいやながら勉強をしているのだ。
ノートに計算式を書いていると、お兄ちゃんがドアを開け入ってきて、こういった。
「なあ、ちょっといいか? 相談があるんだけど……」
「相談? なに?」
「この前、俺のゲーム貸してやったよな?」
「うん、そうだったね」
「今こそ俺にその恩返しをするときだと思う。実はさ、ママが買ってきてくれたおやつが最後に一つだけ余ってるんだ」
「え? どこにあるの。そのおやつ」
「キッチンのテーブルの上に置いといた。どっちが食べるか決めなさいってママがいってるんだ」
これは意外な幸運だ。仲良く半分ずつ食べよう……といってくれるのだろう。
しかし、その考えは甘かった。
「その最後の一つ、もちろん俺にくれるよな? 貸しはしっかり返してもらわないといけないから」
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