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シュウ 人間 18
適正(魔) 適正(剣) 言語理解 環境適応 器(空)
戦神の闘心 異世界人
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石版に刻まれたのは複雑な形をした文字。
複数の線や図形が連なった言葉が幾つかのまとまりを作り映し出された。
石板が小さいからというわけでもなさそうだが思っていたよりも情報が少なくて驚いた。
何を期待していたんだと言われればそれまでだが…じっと見ていると未知の言葉のはずなのに理解ができるようになる。
これも石板の効果の一つなのだろう。
「戦神の闘心?器…?」
他の言葉はなんとなく意味がわかるとして、下の闘心と器…器はあの、魔力を流しても満ちることのない魔力保有量のことか。
戦神…戦の神か。僕が知らないだけでシュウもなんらかの神に会っている可能性は考えなければいけないか。
「加護や祝福は見たことがあるが闘心とは…戦神は神の1柱、大地と戦の神テメノデのことだろう。だが、かの神の加護や祝福はあるが…仮定ではあるが、シュウはかの神の力を纏っているのかもしれんな」
ダウラスによって締め括られた言葉に、石板を持っていたシュウは固まった。
「そういえばロウは見てみたいとは思わない?自分の力」
アデルに返却された石板は布で血を拭き取られ箱の中に戻されている。
厳重に封を施された箱。どちらかといえば封より外界の力を受けつけないようにする為のもののようだ。
「僕の力は僕が一番理解しているから別に要らない」
「あ、そう」
自らの力を知りたいからと石板を望んだのはシュウだけだろう。
ロウが早くしろとアデルに目を向けると、もう一つの箱をダウラスの前に掲げる。
「ロウは貴重な品…だったな。これは我が国に古くからある装飾具だ」
「見せて」
恭しく箱を開けた箱の中から取り出されのは、中央に怪しい光を放つ宝石が埋め込まれた豪奢なバレッタだった。
大きくカットされた赤色の宝石、その周りを銀とも金とも言える色の金属の葉が囲っている。その葉はいくつか小さな宝石の実をつけながら上へ上がり、細いチェーンで繋がっている。
ダウラスからロウへと手渡されたそれを無造作に持ち上げシャンデリアの光に翳す。
宝石の中に光が差し、まるで血の濁りのような暗い色の塊があった。
「かつて初代王家の側室だった者がつけていたとされているバレッタだ。見ての通り美しい物だが、曰くがあってな。ずっと眠らせていた」
「価値を説くのは私めにお任せ下さいませ。…装飾具に使われている宝石は真結晶、それも魔物の血を吸い輝きに変えたと言われるブラッドムーンが使用されております。周りの装飾は金、魔法銀、我が国におります宝飾職人でも短くとも宝石の研磨だけで二月はかかるほど。王家が持つ宝飾の中でも中でも群を抜いて希少な物でございます」
ペラペラと語る説明にまあ希少なんだなという感想しか出てこないが、出てくる物の価値にも限界はある。無限に生成されるわけではない。
等価交換が成り立つかどうかはわからないが、少なくとも生半可な物よりは大丈夫なはずだ。
「…まあ、これで良いか」
「一応だが、それはとても高い物だ。何に使うのかは聞かせてもらっても良いだろうか」
「別に良いけど。シュウには元から見せてやろうと思っていたし、なんならあんたらも見る?広い場所とか無いならここでやるけど?」
「何をやるかは知らんがこの場ではやめろ」
「…色々吹き飛んで後が面倒か」
「今日騎士団の訓練場で空いている場所はどこだ」
陣術を用いた魔術は漏れた魔力が魔力風となってあたりを渦巻くのはよく聞く話だった。
ただでさえ大掛かりなことを成そうとしているのだ。ボロ小屋で発動しようものなら全壊してもおかしくないかもと仄めかすと、広い場所を使うように言われた。
騎士団のための訓練する場所なら結界などもありそこそこ安全だ。
騎士は少し考えた後、ダウラスの質問に答える。
「今の時間であれば第二訓練場が空いているかと」
「ではそこへ行こう。ふむ、私だけが見るよりはあいつも見たほうがいいだろう。アデル。戻る時にアトメラに直ぐに第二訓練場へ来る様に伝えろ」
「畏まりました」
アトメラ?
聞き覚えのある名に思い出したのは僕達を部屋へと連れていき、朝もこの場所まで案内した男の姿だった。
ぐるりと周りを見渡すも姿が見えない。
案内したのち下がったのだ。
「陛下」
「私が案内しよう。暫くはここで過ごすことになるのだ、少しでも道を覚えておくと良いだろう」
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