03___死を纏う男

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レマが選紙の上を手で撫でると、今までの白い紙面が消え繊細な紋様が浮かび上がる。 さらに後を追うように浮かび上がってきた文字はおよそ古代文字と呼ばれる類の古い物。 「神々の系譜にございます。私達か向かおうとしているのはここ、女神を祀る神殿にございます」 「失われた女神の系譜か…神殿に行けば神の声は聞けるんだな?」 「恐らく、としか言えませんが…属神のお声は主なる神の愛し子であれば聞くことが出来たと記録にございました」 続いて取りだした地図には各地に点在する神の印が書かれている。 今現在僕がいる国、レアルディアは太陽神アルマレリアを司る大神殿が存在している。 太陽神は主神の一つ。 他の大国にもそれぞれ主神となる神の神殿があり、全ての神殿で神子が肉体を封印している。 「神の印は大神殿がある場所にございます。大神殿に祀られている主なる神の数は5柱。 レアルディアが祀る太陽神アルマレリア様。 ルーデンスが祀る月神ルストロ様。 ノールディアスが祀る大地と戦の神デメノテ様。 ヴィニアナが祀る天空と守護の女神イヴニア様。 ネデルが祀る海と慈愛の女神ラシニテ様。 属神は主なる神の近くに神殿を構えております」 不自然な空白。 殆どの属神が1つの神の元にある中、太陽神アルマレリアと月神 の二柱に属するその場所は白く痕跡すらない。 神殿があると指さされた場所もレアルディアとルーデンスの国境にまたがる大森林の奥深くにあった。 「夜と輪廻を司るかの方は静寂を好むと言い伝えられております。この場所も、お二方の神に近しい場所ですので間違いなくこの森の中にございます」 「まずは女神の痕跡を辿る」 眠りについているのならば自らの領域にこもるだろう。 「何を言っているのかいまいちわからなかったけれど、つまりはあの大森林に入るってことだよねぇ。大丈夫?僻地になればなるほど魔物はうじゃうじゃ湧いてくるよ?」 「大丈夫って…大丈夫?」 「知らない」 遥か奥まで続いている草原地帯。道なりにゆっくり進む大地には奥に蠢く影が見える。 おそらく魔物。霧者とは違う、この世界に昔から存在している生き物は、霧になって消えたりもせずその命を終えた後も残り続ける。 一体霧者がとこからやってくるのかはわからないままだが、それを知ることが女神への一歩となることは間違いなかった。 神殿があるのは3つの街と2つの村を経由した場所に広がる大森林。 街から街の間は徒歩でおよそ2日から3日かかり、道中は野宿も挟みつつ歩みを進めてゆく。 なぜなぜどうしてと答えるまで聞いてきていたフラノアにも面倒だが教えてやった。まあ、半信半疑なようだったが。 歩きなのは単に馬に乗れないシュウやレマがいたりしたからなのもあるが、1番は"森の前に置いておくことが出来ない"事だろう。 馬車なんてもってのほかだ。あんな物を置いておくのは余程の馬鹿か無知者だ。 さあ盗んでくださいと言っているような物だからな。 以外にも野営は問題なくできていた。 口にするものはレマが調理を行い、道中で襲いかかってきた魔物は切って捨て、時には魔術で命を奪う。 ただ1人、シュウは赤く流れる血に顔を青くしていたが。 起こされた焚き木に寄ってきていたのか、緑の肌を保つ人型の魔物ーーゴブリンの死体を掴んで一箇所に放りながら口元を抑えるシュウを見る。 昨日襲いかかってきた魔犬を切った時もそうだが、精神面が弱すぎる。 順調に魔力自体は溜まっているようだが、この様子ではそれを僕が使う前に使い物にならなくなりそうだ。 「なんか…まだキモチワルイ」 「軟弱な。魔犬を切った時もそうだが血や臓物に対する耐性が低すぎる。使い物になるように魔物の相手をさせていたが今度は何だ」 「あー……や、血もあるんだけど多分、人の形をしてるって言うのがなんか、やばい」 火の前で剣を抱えて蹲りながら、集めたゴブリン共の死体に火をつける様子を見ないようにと顔を伏せている。 もとより争い事のない世界だったとは聞く。が、こんなにも精神が弱い物なのか?
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