03___死を纏う男

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「この大剣は…ロスワンダ様の加護が、かかっているから……霧者の、魂を取り込んで、捧げる。……そうしないと、人が…」 「魂…?え、ちょっと待てよ。さっきなんか剣を突き立てた後に登った光が吸い込まれたのって、まさか女神さ…!っぐ」 「シュウ、何を見たんだ」 シュウの腕を掴み問いただす。僕の記憶は途切れていてわからない。ロスワンダが僕の意識を攫った時に見たのだろう。 「何をって……あ、そっか。ロウは倒れてみれていなかったのか…ハイドラストさんが突き立てた大剣が赤くなったと思ったらさ、すごい数の光の玉が出てきて!それから神殿の壁に溶ける様に吸い込まれたんだ」 「光の玉が……ハイドラスト。お前はロスワ「あ、ロウ様!起き上がられたのですね!よかった…」ッチ」 「急に倒れたからびっくりしたよ〜。にしても惜しい場面を見逃したね!…何?なんかあったのこの空気」 あの時、僕が忘れかけていた事……すでに死の女神の使徒は動き始めている。使徒は目の前にいるこの挙動不審の男、ハイドラストの事だろう。死人を動かすことができるのは死を司る夜と輪廻の女神に他ならない。 そのことを男に問おうとした瞬間、神殿の中から二人の姿が見えた。フラノアの手には幾つかの細長い箱が握られている。 「あの…おれが何か……」 「……後でいい」 「レマさん、フラノアさん!」 「ちょっと気になって、神殿を見学させてもらっていいました。それで……あの、これ。奥で見つけたのですけれど…」 レマが指差したフラノアの箱を見てあ、と声を出したのはハイドラスト。慌ててフラノアからそのうちの一つを受け取って蓋を取ると、どこか見覚えのある色合いの剣が一振り納められていた。 「剣?」 「勝手に開けたらダメかと思って持ってきたんだけどさぁ、祭壇の裏に置かれてあったんだよね。土埃も被ってないし、最近のものだと思うんだけど…剣かぁ。通りで重いわけ!」 足元に無造作に箱を置いたフラノアは手をぶらぶらとさせた。 全ての箱を開けて出てきたのは同じく燻んだ黒い刀身。三本ある剣はフラノアと、シュウが持つそれと似通った姿形をしていた。 「これ…おれの剣と、おんなじだ…」 「……霧者の魂を回収するんだな?そしてロスワンダに捧げ、輪廻させる。そうだろう」 「え、あ……うん」 ハイドラストが持つ大剣は霧者に触れた時に魂を回収できる代物。これは神器。神が与えた魂を回収するための道具。 僕は先ほどロスワンダの前に連れ出された。 僕と一緒にいたこいつらの中で、剣を扱える者に与えたのか。 「コレはシュウとフラノアが使え。お前達の為に神が設えた物だろう」 「は?」 「へ、俺ぇ?」 僕がそれぞれの目の前に剣を遣すとすっとんだ声を出した。阿呆丸出しな顔に思わず2度目の舌打ちが飛び出そうになったが、すんでのところで堪える。 それでも半信半疑に剣を拾い上げた途端、フラノアの手の甲にうっすらと紋章が浮かび上がってきた。 「なんか浮かんできたんだけど〜?」 「うわっ何コレ」 浮かび上がった紋章は薄青。どこかで見た覚えがあるとあたりを見渡すと、柱や壁に彫られている模様と同じことに気がつく。 やはりロスワンダがより効率的に魂を集めることができるようによこした物らしい。 「これは……夜と輪廻の女神の紋章ですね。フラノア様とシュウ様は正しく、この神器の持ち主として認められたのでしょう」 「……待って待って、もし認められなかったらどうなってたのさ」 「そうですね……私が聞いたことのあるお話ですと、天空と守護の女神イヴニア様から賜りし宝剣を賊が奪い市民に向けた時、全身から白炎が上がり跡形もなく燃え尽きたというお話は聞いたことがございます」 「え怖、そんなの持たせたの…」 「守護騎士フラムダードの話じゃん。そっかー神器かー」
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