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「天気もいいですし、絶好の旅日和ですね」
「旅っていうほど軽やかなものじゃない気がするけど…まあ良いや。僕はしっかり下調べをしたからね。今日は運がいいよ」
「……zzZ」
まだ日が上りきっていない薄暗い朝の時間、宿屋を後にして向かっているのはこの街の北門だった。順当に道を辿れば幾つかの街を経由して王都へと辿り着くことができる。
半分眠ったままの状態のシュウを引きずりながらフラノアの後を着いて行く。
レマは空を眺めたりシュウをゆすったりと忙しそうだが。僕が何か言うことでは無いだろう。
「今日出発する乗合馬車があったからね。予約しておいたのさ!いやぁ〜僕が言うのもなんだけど、ここ最近歩いて走ってばっかりだったから足を使わないで移動できるなんて楽だなぁ!」
「…(シュウ様、おきてください。置いて行かれてしまいますよ)」
「……だいじょうぶ。あたまは起きてる」
「レアルディアで使わなかったのは霧者のせいか。まあ、無いよりはある方がいいだろう」
「あれなんか褒められてる気がする」
フラノアが御者だろう小太りの男に金を渡した所で全員が乗り込む。中には武器を所持した男三人と子供連れの男女が1人ずつ。
馬車の後ろには荷馬車が連なっているからこれも運ぶ対象なのだろう。今頃ようやく目が覚めたシュウが馬車を見て目を輝かせていた。
「……」
「乗合馬車は彼らみたいに冒険者が同行するんだよねぇ。僕も冒険者だけど、君達のこともあるし今回は乗客かなぁ……にしてもシュウ、大丈夫?顔青いよ?」
「大丈夫……多分…。尻……尻が痛くて…地面の凹凸が直に振動で来るっつぅ…!だけだから……」
「まだそれほど立っていないのにそんな体たらくでどうするつもりだ。そんなに痛いならたっていたらいいだろう」
「立つと転がりそうだから無理ぃ…」
「あら…お薬ならあるのですが、塗り薬ですのでどうしましょう…」
「放っておけば」
「そう言うわけには…あ、ロウ様。昨日神殿へご挨拶に伺った際、月神殿に言伝を飛ばしておきました」
「言伝?」
僕が聞き返すとレマが困り顔で笑う。
「はい。私達がいきなり訪れるよりも面会時間や、神子に会うための確認の時間が短くなると思いまして…余計でしたでしょうか?」
そういえば城で読んだ本に神殿特有の情報伝達手段があったと書かれていたな。確か神鳥だったか。流石に製法までは書かれていなかったが神殿と神殿しか経由できないとはあった。
「別に悪いなんて言ってないけど」
「なら良かったです」
特に何事もなく馬車での移動は続いた。日が落ちる頃に街へ辿り着き、朝早い時間に出るのは変わらないが、同乗している顔ぶれや後ろの荷馬車の中身は変わったようだ。
いつの間にか仲良くなっていたらしいフラノアは冒険者たちと手を振って別れ、僕達は門の手前で馬車からおりる。
馬車にの客だとしても身分証を提示しなくてもいということは、2つ前の街で知ったことだが。
レアルディアの王都とは違い、どこか整然とした作りのルーデンス。
等間隔に建てられた家々と、大小の違いこそあれど乱雑さを感じさせない並び。
これはルーデンスの王都だけで今までの街はどこも作りは余り変わらない。
まあ、何故上から見下ろしてもいないのに並び云々がわかるのかと言われれば、門の近くの板に簡易の地図が貼られているからなのだが。
「とりあえず宿、か」
「賛成ー…」
「ここに来たのは2回目にございますが、何事もなければ明日にでもお会いできますので、本日は休みましょう」
「あー僕は何度か来たことはあるけれど、さすがに三男だからお城とかに入ったことがないなぁ。僕が来たのも冒険者の依頼があったからだーー」
「お待ちしておりました!!」
御者だった男と話し終えて大通りを振り返った時、どこかレマと似たような服を着た女が立っていた。
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