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「ルセ様、お久しぶりでございますね」
「はい!レマ様もお変わりなく!こちらにいらっしゃると聞いて飛んでまいりました!」
小走りでレマの元へと駆け寄るのは小柄な体。
燃えるような赤い髪を揺らしながら飛び跳ねる様は、神子と言うよりもそこら辺の子供にしか見えない。こんなのが神子なのか?
「そちらの方が太陽神様が遣わしてくださった方ですね!はじめまして!わたしは、月神ルストロ様の神子をしておりますルセ・トロイアと申します!ええと…ロウ様、シュウ様、それとレアルディアの王族フラノア様…で合っておりますでしょうか?」
「…何故名前を?」
「あ、いえ!レマ様から頂いたお手紙に書いてありましたので!あまりおもてなしは出来ないかもしれませんが、神殿の来客用の部屋をご用意してます!急ぎの用との事ですので、本日中に内容をお聞きし、明日にはと思っているのですが、どうでしょうか!」
息継ぎも無しに発せられる言葉は、圧倒されることはともかく内容は申し分ない。
これだけ早く済ませられそうならそれに超したことはないのだからな。
「それでいい」
「!!それではご案内しますね!」
客用の部屋へ案内された後、大人数が集まることが出来る祈りの間を借り、掻い摘んで話す。
初めはふんふんと相槌を打っていたルセも次第に顔色を暗くする。
神子が封じている邪神の体を天へと戻すことは理解できるが、急に無くなると言われても無くなった後が想像できない。
封じられた年数は神子となったルセの年月が短くとも数年は過ぎているのだから。
「そうですか…にわかには信じ難いお話ですが、ルストロ様も本当とおっしゃっていますので信じます!」
「えー、今聴きながら話してたの?」
「ルストロ様はわたしを導いてくださいますので!でも…本日その儀式を行うのは難しそうです。明日の早朝に行いましょう!それでしたらその日のうちに出立が叶いますでしょう?」
この後簡単ではありますが食事を部屋へ運ぶことと、明日準備ができたら呼ぶ旨を伝えられ話は終わった。
ジェメリも神殿に入った時から感じる神の気配に面倒なことは早く終わらせたいものだと思う。
「僕達はどうするのかな?」
「どうでしょう…ロウ様、一応私も早くに起きておりますので、必要な際はお呼びくださいね」
「レマとフラノアは必要ないだろう。見たいのなら別に来ても構わないだろうが、気持ちのいいものではない」
「えーじゃあ僕は遠慮しとこっと。でも何かあったらわかると思うから!」
「ああ。…シュウ、お前起きていなかったら引き摺ってでも連れて行くからな」
「俺が行くのは決定なんだな…そういえば、神殿間であんなに簡単にやり取りできるのならなんで手紙をレアルディアから送らなかったんだ?」
割り当てられた部屋へと行く合間に何を聞くかと思えば…。
「アレはそう簡単なものでは無い。あくまで同一の神の領域の間を繋ぐことができる代物だ。神の領域は重ならない。アルマレリアとルストロは系譜が同じだが違う神。届かないだろう」
「なるほど…だから他の神の神殿や神域がどうなろうとわからないのか」
「ああ」
わかっていたのであれば、このような状態になる前に止めることができたはずだ。僕のようなものに頼らずとも。
早朝。まだ日が上らないうちに扉が叩かれる。
その音に姿を消したジェメリに苦笑が漏れた。扉の前にいる人間がジェメリのことに気がつくはずがないのに。
立てかけていた杖を手に取り扉を開けると、白い神服を着た男が明かりを手に立っていた。
「ロウ様、準備が整いましたのでお呼びいたしましたがよろしいでしょうか」
「起きている」
「そうでしたか。他の皆様も伴いますか?レマ様からはロウ様とシュウ様をお連れするように伺っておりますが」
「変更はない」
「ではそのように…シュウ様、失礼致します。準備が整いましたのでお呼びしておりますが、起きておりますでしょうか」
『………ふぁーい……』
…明日は早いとあれだけ言い聞かせたのにまさか今起きたのか。
返事があったからと神官を退けて部屋に入ると、半分寝たような状態で服の釦を止めているシュウがいた。こいつ……
僕が前に来たことにも気づいていないような顔に、手を一振りしてコップ一杯分の水を生み出して顔にかける。
氷にならない程度に冷たくした水を被ったシュウの目は丸く、僕を見た。
「は…え、冷た…濡れてるんだけどっ!」
「お前が半分夢の中にいたようだからわざわざ僕が手助けしてやったんだ。ありがたく思え」
「いやでもやり方「何か文句でもあるのか?」…イエ、ナイデス」
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