04___裏切り者の魔族

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腕よりも強く感じる重圧。抵抗。だが、先ほど垣間見た影響かそれほど国は感じない。 ぎりぎりと締め付けられるような頭の痛みを抱えながら少しずつ天へと送り返す準備を整えていた最中、首元に殺気を感じて構築はやめないまま暗がりとなっている奥へと一瞬目をやった。 黒い影に潜む一対の赤目。 『…ジェメリ、あとは1人でできるか』 『んー、やってみる。どうかした?』 『襲撃者(ゴミ)がやってきたようだから相手をしてくる』 『がんばって』 手に持つ杖を床に突き立てる。そのまま蔦で補強し無理矢理に立たせてから反射的に魔術紙を取り出して発動する。途端に降りかかる一撃。 右側に展開される風と氷の防壁が阻んだのは、黒く艶消しがされた刃物のような物…男の手が変形した爪だった。 『鼓動満ちる肢体 血肉巡る肉体の制御』 『姿なき氷塊よ形を成せ』 まず1番初めにかけるのは身体能力と自らの体を制御するための魔術。 そして足元に揺蕩う水を使い剣を一本作り出した。 次にちりりとさっきを感じた場所に剣をあてがえば、爪と氷が削れる嫌な音が耳に響いた。 一度止んだ攻撃に様子を伺いながら男を観察する。 襲撃者は異様な姿をしていた。全身を黒で包み頭も隠す徹底ぶり…しかしだらりと下に下げられた腕だけが異様に長く、その先から黒い爪が生えている。 こいつが今回の親玉なのだろう。 気に纏う魔力は地上にあったそれと全く同じ物だった。 つらつらと考えながらわずかに覗く目を追う。まるで機会を伺うようにしているが…要は目の前の男に何もさせなければいい。 足を踏み出す。 水を這う様に流れ出た魔力を動かして男の足元から蔦を生み出し拘束させる。まあ躱されるだろうが。 蔦を動かす。近づいて右手の剣で一閃するが防がれる。あの爪は僕の氷よりも硬い。 考える隙を与えない様に続け様に攻撃を繰り返すが…少し部が悪いな。 力の大半をジェメリの方に渡してい術を発動してもらっている今、決め手に欠ける。だがーー 『ロウ、いくよ』 手出しは、させない。 一気に加速。宙に浮かぶ頭を掴む様に手を伸ばした男の腕を切り飛ばす。知っていたんだよ、お前が封印が解けるのを狙っていたことなんて。 切り飛ばした腕は黒い液体を撒き散らしながら、水の中へと落ちた。 時間にして僅か数秒。その間に頭は、もう僕達の手の届かない領域へと押し上げられた。 だというのに何故。 「っ……」 目の前の男は歪に口角を持ち上げているんだ。 切り飛ばされた腕から濛々と黒い煙が巻き上がる。全長に気がつけずに僅かに吸い込んだ喉は、息を吸う度に喉が焼ける様に痛くなる。 男の姿がぶれる。 気がつけば男はシュウの前に立っていてーーなんで、防壁を展開していない!? 男の狙いは二つ。 一つは邪神の封じられた体を持ち帰ること。そして…シュウを、連れ去る事。 第一優先がなくなった今、シュウを連れ去ることに方向転換したのだろう。 どれだけ遠いのか渦巻く様な魔力を垂れ流しながら僕の構想とは違う、そして僕が良く知る魔術を展開していった。 欲を言えばじっくりと発動を見たい所だがそんな場合ではない。すぐにポーチに手を入れて取り出した魔術紙に魔力を流す。 不安定だが仕方がないか…この世界に来てから得た言葉を使いさらに改良をした転移魔術。 時間的に間に合うのかは五分五分。 ジェメリとの繋がりは既に切れている。持つ魔力を一気に流し込んで足元に陣が浮かんだ。 景色が切り替わる。 遠くに見えていた男の歪な顔が目前に来た時、シュウを掴もうとした腕が捕えたのは、僕の腕だった。 「ロウっっ!!」
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