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「レマ!」
「レマさん!!」
窓の外を眺めながら静かに涙を流す姿は、まるで一枚の絵の様な神聖さがある…でも、レマさんも神子だけど人だ。
2人で駆けよると、レマさんはぱちりと瞬きを一つして、そして悲しげに微笑んだ。
「シュウ様、フラノア様…申し訳ありません、この様な醜態を」
「気にしないでよって、血まみれの僕が言えたことじゃないけどさぁ…何かあったの?」
フラノア王子の言葉にまた空の奥を見た。
俺たちには見えない何かを見る様に。
「雨が、降っているのです。……神の涙が」
「雨…?」
「フラノア様なら聞き覚えのある名前かもしれません。ラジル・ニフティが死んでしまったようです。……私達神子は僅かにですが、繋がりがあります。この雨も恐らく、暫く続くでしょう」
「ラジル・ニフティ…って、ネデルの神子」
「はい」
前にレマが言葉にした神々の系譜と神を祀る国の名前。
ネデルが進行しているのはーー海と慈愛の女神、ラシニテ。
だから嘆きの雨なのか…。
「そう…お悔やみ申し上げるよ。今の僕じゃあ言葉しか伝えられないけれどね」
「言葉だけでも十分でございます。ですが、神は……そういえば、ロウ様はどちらにいらっしゃるのですか?」
「…そのことについて、話しに来たんだ」
取り出したハンカチで涙を拭ったレマの前に座り、俺は今まであったことを全て話した。
「…なるほどねぇ。上も大変だったけれど下もかぁ。で、ロウも行方不明と」
「でもこの杖…ジェメリだっけ。ジェメリが慌ててないから多分、大丈夫なんじゃないかなって。確証はないけど」
「そう、祈るしかございませんね。ですが…これからどうしましょう。ロウ様が居なくなった今、邪神の体を神の元へと送ることもできません」
俺達の旅はロウが先導していた物だ。ロウが何を考えて道筋を決めていたのかはわからないけれど、どういう目的でこの旅をしていたのかはわかる。
レアルディアとルーデンスは目的を終えた。
ネデルの神子が殺されたということは、十中八九神子が封じていた邪神の一部は持ち出されていると思う。
次に狙うのは残りの二つ。
でも俺達じゃあ何も出来ない。だからーー
「俺はもう一度、夜と輪廻の女神の神殿へと戻るつもり」
「女神の?なんで?」
「少なくとも、目的は同じで戦うことのできるって考えたら1人しか思い浮かばなかった。…そうじゃなくても、彼なら邪神のこと、他にも何か知っているんじゃないかって」
俺の言葉にフラノアは考えるように顔を傾げてから一つ頷く。
「うん、いいんじゃないかな?そうと決まれば早い方がいいよね!」
「…ロウじゃなくても、着いてきてくれる?」
この度で人を集めたのは紛れもなくロウだ。俺も同じ…ロウが居なかったら今頃、お城の中にいたかもしれない。
性格はあんなだけど、強くて、自分の考えを持って動いていた。
目的がある人は、次にどう動くのかを決めることができる…だから今、俺は後ろへ下がろうとしているんだけれど。
そんな俺の考えを笑い飛ばすかのように、フラノア王子はからからとお腹を抱えて笑った。
「あっははは!何言ってるのさ!君もロウと同じくこの世界へと来た人じゃん!別に僕、目的があってロウに付いてきたわけじゃないしね!ただ王城から離れたかっただけだから、このまま着いてくよ。まだ君危なっかしいし?レマは?」
「私も同じ気持ちです。どの道を進んでも、進むべき道は変わらないでしょう……シュウ様は、ロウ様を探すつもりですね?」
「…うん。多分、ロウを探すにはその、邪神を追わないといけないと思うから…」
「誰も、見知った方が居なくなって探さないと言う方は居ないです。私も微力ながらお手伝いさせて下さいませ」
「ーーありがとう」
「なら行動は早くしないと!僕すぐに出られるように荷物をまとめてるからさ、途中ご飯を買って早く出よう」
「わかった!」
あてがわれた部屋に戻り、息を吐いた。
やるべきことは少しずつ見えてきている。まだ、考えがまとまらないけれど、一歩ずつ確実に進まないと。
ぱちりと両手で頬を打ち気合を入れる。
そうして自分の荷物を取りに行こうと足を踏み出した所で、視界が暗転した。
『ごめんね』
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