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翌日。
高校に行くための準備をする。
学校にアクセサリーを付けていくのは不味いと思い、私は右手に嵌めていたブレスレットを外した。
そうして机の引き出しにしまおうとした時だった。
「ねえ、お姉ちゃん」
いきなり妹が私の部屋に入ってきた。ノックも無しに。
運悪く、私の手には外したばかりのブレスレットが握られていた。
途端に妹が目を輝かせて私の手元を見つめる。
「わあ、なになに、そのブレスレット! カッコいい。欲しい!」
「いや、ちょっと……」
困惑する私から強引にブレスレットを取り上げる。
そして上目遣いで私に強請ってきた。
「ねえ、これ私にちょうだい」
「あんたねえ、この間も私から四葉のネックレスを取ったばかりじゃない」
「お姉ちゃんがくれるって言ったから貰ってあげたんじゃん」
「はあ?」
「そんなことより、このブレスレット貰っていいよね?」
「勘弁してよ。昨日買ったばかりなのよ」
「お願い! 一生のお願い! これちょうだい!」
「はあ……」
盛大にため息をつく。結局こうなるんだ。
だから、机にしまって鍵を掛けておこうと思ってたのに。
「やったあ! 早速彼氏に見せてあげようっと」
私の冷たい視線なんかものともせずに、妹は黒水晶のブレスレットを自身の右手に嵌める。
そして、勝ち誇ったような笑顔を私に向けた。
「じゃあ、私は先に行くね」
「はいはい、さっさと行って。あんたの高校は私のより遠いんだから遅刻しないようにね」
「えへへ、彼氏がバイクで送ってくれるから余裕余裕」
彼氏がどうとか聞いてもないのに言ってくる。
何気ない会話なのかもしれないが、彼氏が居たことのない私への当て付けに聞こえてしまうのは……私の心が歪んでいるからだろうか。
(妹に天罰が下ればいいのに)
積もり積もった苛立ちから、呪いのような言葉が頭をよぎる。
一つだけ、どんな願いでも叶えてくれるという噂のブレスレットに期待した。
だけど、すぐに私は我に返った。
いけないと思い、かぶりを振る。
それから、もう一度大きくため息を落として、部屋を出た。
今日も友人に妹の愚痴を聞いてもらうことになりそうだ。
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